- 劉 梅 – Mei Ryu[中医師]
中国黒龍江省生まれ、黒龍江中医薬大学卒業後、ハルビン医科大学付属二院に内科医として臨床を経験。1994年に来日、北海道大学医学部客員研究員を経て、2001年、薬日本堂に入社。主な著書『中国の女医さんが教えるおいしくて身体にいい中華』『病気・症状を改善 これならできる漢方ごはん』。
キレイな花だけじゃない!芍薬は女性の強い味方!
生薬の花めぐり(2)
今回は芍薬の話をお届けします。
芍薬(シャクヤク)は、だいたい5月中旬に花を咲かせます。
ボタン科の多年草で、アジア大陸北東部の原産、高さは約60cmに達する植物です。
原種の花は白色で、花弁は5~13枚。
牡丹が花の王様「花王」と呼ばれるのに対し、芍薬は花の宰相「花相」、または「花仙」と呼ばれ、「愛情」の象徴となっています。約2000年前の『神農本草経』(もっとも古い生薬の書物)には、根を生薬とした記載があります。
中国では宋代から育種が始まりました。
日本では、江戸時代に鑑賞・園芸用に花の色や形を美しくするための品種改良が行われました。花の色はピンク、赤、紫、黄、緑、黒、二色など、形も菊やバラなどと似ているものが作られています。「一重咲き」と「八重咲き」があります。
花は牡丹に似ていますが、どこが違うのでしょう?
まず葉を見ると、芍薬は葉の数が多く、細長くツヤがあって、濃い緑色です。
牡丹は葉の数が少なく、幅広い葉に切れ込みがあり、ツヤがなく、緑色にくすんだ黄色が混じっています。そして、根本の茎の部分に皮がツヤツヤするのは芍薬、樹皮がゴワゴワしているのが牡丹です。
なぜなら牡丹が樹で、芍薬は草だからなんですね。
開花の時期も違います。牡丹は4月末に、芍薬は5月中旬に咲きます。牡丹が終わると芍薬の時期になります。
中国では、芍薬は「赤芍」と「白芍」に分けて使われています。
花の色に関係なく、根の外皮をつけたまま乾燥したものを「赤芍」、外皮を取り去ったものを「白芍」とするのが一般的です。
「赤芍」になるものは赤花が多く、野生のものが品質が良いとされています。産地は中国の東北や内モンゴル、四川など。四川産の赤芍は川赤芍、内モンゴル産の赤芍は多倫赤芍と呼ばれています。
芍薬のみならず、すべての生薬は品質、薬効を保つため、産地、品種、栽培、採収、加工方法などにこだわっています。このような生薬は「道地薬材」といい、良い薬の代名詞となっています。何故かといいますと、土、水、温度、湿度、日差しなどが、生薬の成分に大きく影響を与えるためです。
品種の安定は生薬の命とも言えます。こういった訳があって生薬は中国産に頼ってしまいます。
芍薬の花は食べられます。
気(元気、エネルギー)と血の巡りを良くするので、月経痛、月経不順、イラつきに良いとされています。
生の花弁、卵、小麦粉と合わせて、焼くか揚げます。「芍薬パンケーキ」「芍薬天ぷら」ですね。また、芍薬の花弁を酒に漬けると、芍薬花酒ができます。陰干した花弁はお茶やお粥に使います。
日本で処方に使われる芍薬は、だいたいが「白芍」です。
白芍は補血薬に分類され、血虚(貧血のような状態)や月経痛、手足がつった時の痛みを抑制する効果もあります。現代では、抗けいれん作用について研究されています。「赤芍」は清熱涼血薬に分類され、体を冷やす生薬です。火照りや発熱を伴う症状や病気に良いとされています。
また、芍薬は、四物湯、当帰芍薬散、加味逍遥散、温清飲、芍薬甘草湯、小建中湯、桂枝茯苓丸、桂枝湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、葛根湯、小柴胡湯、大柴胡湯など多くの漢方方剤に配合されており、私たちにとってなじみのある生薬です。
芍薬の魅力が伝わったでしょうか?!
立てば芍薬、座れば牡丹。次回は歩く姿は「百合の花」の話題をお届けします。
お楽しみに!
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