- 劉 梅 – Mei Ryu[中医師]
中国黒龍江省生まれ、黒龍江中医薬大学卒業後、ハルビン医科大学付属二院に内科医として臨床を経験。1994年に来日、北海道大学医学部客員研究員を経て、2001年、薬日本堂に入社。主な著書『中国の女医さんが教えるおいしくて身体にいい中華』『病気・症状を改善 これならできる漢方ごはん』。
ほてりや血流の改善に、牡丹の根皮が実力を発揮
生薬の花めぐり(1)
このコラムは、毎月1回、生薬になる植物とその花を紹介します。
生薬をより身近に感じていただき、分かりやすく解説します。どうぞお付き合いのほど、よろしくお願いします。
約5年前から、生薬になる植物のことを知りたくて、休みの日に薬草園や植物園に足を運ぶようになりました。生薬の花の可愛らしさや美しさに惹かれて撮影を始め、ますます漢方とのつながりが深くなりました。
信じられないかもしれませんが、私は漢方の専門とはいえ、道端の植物を見ても「これは生薬です」とは言えなかったのです。大学生の頃は植物に興味がないうえに、生薬の効能や効果も暗記するばかり。
見てください!私が使っていた教材はこんな風です。文字ばかり、絵もないし、写真もありません。つまらないでしょう!?
さて、今回は牡丹の話です。
今の時期、東京のあたりでは牡丹の花が咲いています。赤や白、様々な種類があり、中国では牡丹の花は「花の王」とも呼ばれ、その華やかさは「繁盛」「幸福」の象徴となっています。
中国を原産とする植物で、約3000年前の詩歌に数多く登場します。
約2000年前の『神農本草経』(もっとも古い生薬の書物)に根皮を生薬とした記載があります。
人口栽培の歴史は1500年以上、日本に入ったのは奈良時代だそうです。観賞用と薬用があります。
牡丹はボタン科ボタン属の落葉小低木。中国西北部が原産地です。
本来の開花時期は春の終わりから夏の初旬です。花弁はタンパク質、脂質、糖質が含くまれ、ビタミンやミネラルも豊富です。宋代(約1000年前)からは食用にしたのだとか。
明代(約600年前)の書物では、「牡丹の落ちたばかりの花弁は煮て食べられる」、また「花弁を摘んで洗い、小麦粉と水に合わせて、ごま油で揚げると美味この上なし」と書かれていますし、清代(約350年前)の『養小録』には「牡丹の花弁はスープにしてよし、蜜につけてよし、肉汁で煮込むのもまたよし」と書かれています。
長い年月を経て、環境の変化や、花をよりキレイに咲かせるために品種改良を繰り返したことで、株全体の形、根や葉、花などの形態が昔とは変わってきており、普段見かけるのは観賞用のものがほとんどです。
牡丹の根皮は外層に有効成分が多く、この部分を薬に使います。牡丹の根皮を乾燥させたものは「牡丹皮」と呼ばれ、皮の厚みなど「根の品質」で選ばれています。
現在薬用の品種は大体いくつか決められて、地域に相応しい品種を栽培されています。
今回の牡丹の写真は上野の東照宮で撮ったものです。見た目で薬用できるかどうか決められません。
「牡丹皮」は清熱涼血薬に分類される体を冷やす生薬です。
火照りや発熱を伴う症状や病気に良いとされています。例えば炎症に伴う発熱、月経前の火照り、更年期のホットフラッシュなどに使われています。
血流の改善にも良いので打撲に、また月経痛や頭痛などの痛みを抑制する効果もあります。
日本で牡丹皮が配合されている処方は、温経湯、六味地黄丸、八味地黄丸、大黄牡丹皮湯、桂枝茯苓丸、加味逍遥散などがあります。
いかがでしょう、牡丹の魅力が伝わったでしょうか。
次回は「芍薬」の話題をお届けします。
お楽しみに!
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