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公開日:2016.06.15 更新日:2020.05.204123view

蒸し暑い上海の夏を快適に過ごすアイテムとは?

中医の玉手箱(1)

漢方ライフ読者の皆さん、はじめまして!漢方スクール品川校講師の原口徳子です。私は、2003年から10年ほど上海で生活し、その間に、昔からずっと興味のあった中医学の勉強をしよう!と42歳で一念発起して上海中医薬大学に7年間通い、卒業して中国の「中医師」の資格を取得しました。昨年より講師として漢方の素晴らしさを伝える仕事をさせていただいています。

 中医学とは、中国の伝統的な医学で、中国では西洋医療を指す「西医」とわけて「中医」と呼ばれています。舌と脈を診ながら問診して患者の状態を探り、治療方法と薬を決めるものを指すだけでなく、鍼灸や推拿(マッサージ)、養生や気功なども中医学の中に含まれています。
 
 昔は、現代のように病気になったらすぐに医師に診てもらうことができるとは限りませんでした。自らが「病気を治し、病気にならないための身体づくりをする」ための方法が生み出され、現代まで脈々と続いています。

 さて、私が10年ほど住んでいた上海は、夏の暑さと湿気が半端じゃない!真夏の気温は体温より高い39度になるし、ねっとりとまとわりつくような暑さで、建物の外に出ると一瞬めまいがするぐらいです。暑さに加えて蚊などの虫との戦いの日々でしたが、そんな時には生薬を取り入れた昔ながらの暑さ除け、虫除けのアイテムのお世話になりました。

夏といったらコレ!汗のかきすぎを防ぐ、酸味の効いたドリンク「酸梅湯(スワンメイタン)」。今どきはペットボトル入りのものもありますが、昔ながらの煮出しキットを上海在住の友人が送ってくれました。どれどれ、中身を見てみましょう~?黒いのは烏梅(ウバイ)ですね。青梅の実を黒くなるまで燻したもので、漢方では咳止めや下痢止め、喉の渇き止めに使われます。消化を促進する山査子(サンザシ)や気を補う甘草(カンゾウ、リコリスのことです)、お腹の張りや食欲不振によい陳皮(チンピ、ミカンの皮を干したものです)も入っています。おお、疲労回復によいとされているハイビスカスの花も入っています。水に2時間浸したものを煮て、氷砂糖を加えたら、火からおろして冷やし、仕上げに別添のキンモクセイの花を乾燥させたものをそえて、いただきます。

もう一つは「緑豆バー」。日本では「小豆バー」ですが、こちらでは緑豆のアイス。豆の粒がそのまま入ったものが人気です。豆類は体内の余分な水分を出してくれますが、「緑豆」は身体の熱も取ってくれるため、夏の必需品です。暑さでのぼせて口内炎が出た時に、緑豆を煮て蜂蜜などで甘味をつけて食べなさい、と言われるほどです。

虫除けはといえば、上海にいた頃は、暑くなり始めると薬局の店先で虫除け効果のある生薬、ヨモギや白芷、蒼朮などを紙に包んだものを売っていました。かなり強烈な匂いがします。置いておくだけでも効果がありそうですが、部屋の中で燃やして燻蒸すると効果がバッチリなのだとか。私も、一ついただいたことがありますが、「煙がすごいので気をつけてね」と言われ、消防車が出動してはたまりませんから、燃やさずに部屋におく方を選びましたが…。小さな袋に入れて吊るすタイプだと、携帯もできて便利です。

  現代生活の中にもしっかりと中医学の智慧が根付いていることに感心することの多かった上海での生活の中から、もっと身近に中医学を感じられるような話を紹介していきます。

原口 徳子
原口 徳子 - Noriko Haraguchi[中医師・薬日本堂漢方スクール講師]

1963年仙台市生まれ。高校生の頃に太極拳を学び、経絡や気の流れに興味を持つ。家族の転勤で2003年から10年ほど中国に住む間に、上海中医薬大学で中医学と鍼灸推拿学を7年間学ぶ。修士号(中医学)を取得して卒業、中医師の資格を取得後2014年に帰国。「お母さんと子供を元気にする漢方と養生」の普及のために活動中。

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