- 鈴木 養平 - Youhei Suzuki[薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師]
1969年宮城県生まれ。東北医科薬科大学卒業後、薬日本堂入社。臨床を経験し、店舗運営、教育、調剤、広報販促に携わる。札幌に勤務中、TVの漢方コーナーにてレギュラー出演。漢方薬による体質改善の指導・研究にあたる一方で、“漢方をより身近に”とセミナー講師・雑誌・本の監修(『おうちでできる漢方ごはん』『かんたん・おいしい薬膳レシピ』)で活躍中
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『医心方』~「仙人の杖」と呼ばれるスーパーフード、クコで不老長寿
古典DE養生 第1巻
ある日の晩の鈴木家での会話。中学生になる娘に聞いてみました。
「長生きしたい?」
「したくない」と即答。
「じゃあ何歳まで生きたい?」
「80歳くらいかな」
「どうして?」
「だって病気になったり、介護されてまで生きたくないし・・」
同じ質問を漢方スクールの生徒さんにしてみても「健康のまま人に迷惑をかけずにポックリいきたい」という答えが大半を占めます。皆さんはどうでしょうか?
健康を保つために、日々の“養生”がとても大切であるということは、誰もが知っていることです。
ではこの“養生”、「ようせい」と読む?「ようじょう」と読む?
答えはどちらも正解。
中国(思想研究)では「ようせい」、日本では「ようじょう」と読むことが多いようです。
中国養生思想の中に、「神仙思想(しんせんしそう)」があります。不老不死の伝説のことで、不老長寿の秘薬や仙人などについて説かれています。古代の皇帝や王室などの権力者は永遠の命を追い求め、不老不死の方法を追求しながら生きていました。それが時代とともに権力者から一般市民へと伝わり、今では不老不死の追求という概念から“どう生きるのか”“どう生き抜くのか”という生き方を探るヒントへと変わっていきました。
今回紹介するのは、日本最古の医薬学書である『医心方(いしんほう)』です。医心方は平安時代中期の鍼博士(鍼の専門家)、丹波康頼によって編纂されました。数ある中国古典に載っている200以上もの文献から、日本の風土や日本人の体質に適する内容を抜粋、引用、整理して30巻にまとめあげた、今で言う「医学大全書」です。神仙思想(伝説的な方法)が前提になっている箇所もあるので「本当に効果があるのか?」と疑いたくなる部分も出てきますが、現代に通じる養生術も数多く掲載されているすばらしい書物です。下記の文章がその中の一節になります。
「枸杞(くこ)の効用と服用方法」
ある日のこと。1人の年若い婦人が、80~90歳ほどに見える老女を棒でたたいています。それを見た通りがかりの者がそのわけを尋ねると、その婦人はこう言いました。
「これは他でもない私の子のひ孫です。家に良薬がありますので、飲ませようとしてもいうことを聞きません。そのためこんなに老いてしまい、病で歩くことも不自由になってきました。だから、たたいてなんとか薬を飲まそうとしているのです」
驚いて婦人に年齢を尋ねたところ、「私は373歳です」と答えました。
中省略
枸杞を長期にわたって服用すると、病を除いて寿命をのばし、人を聡明にし、身体を軽やかにし、気力を増進し、冷え性を治し、熱を下げます。百日間にわたって服用を続ければ、あらゆる病がことごとく治り、目も耳も他人に分からないところまで、よく分かるようになります。・・・・・千金を与えられても伝えてはなりません。
『医心方』巻26第1「枸杞(くこ)の効用と服用方法」の一節より
老女が婦人の子のひ孫!?しかも年若く見えた婦人の年齢が373歳という答えにも驚愕です!!
そしてなんと、その良薬とは不老長寿の薬効を持つ「枸杞」でした。
おそるべし枸杞!杏仁豆腐の上に乗っているだけの代物ではありません。
枸杞は、霊芝や高麗人参と同じく漢方の上品にあたる優れものです。赤いものは血を補うとされ、特に女性に良く、また目に栄養を与えますので視力低下や疲れ目にお勧めです。薬酒にするのも良いですが、私はマグカップに1つまみ入れ、お湯を注いで3~4分蒸らして、枸杞茶として飲んでいます。もちろん、やわらかくなった実はそのまま食べます。料理酒やみりんに入れて、枸杞酒や枸杞みりんとして料理に、はちみつに漬けて毎晩スプーン1~2杯をお湯でといて飲むのもお勧めです。
毎月このコラムでは、さまざまな養生書をピックアップし、そこに書かれている養生を私の経験を織り交ぜながら紹介していきます。今日から活かせる健康法が見つかると思いますので、毎回楽しみにしてくださいね。次回は、『医心方』第二弾、さまざまな養生術を紹介します。お見逃しなく!
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