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公開日:2025.04.21 更新日:2025.04.21117view

寝違え・四十肩に~独活葛根湯

漢方薬のつぶやき vol.30

葛根湯の仲間?
「四十肩、五十肩、寝ちがえ、肩こり」 
こんな効能の漢方薬があるのをご存じですか?
独活葛根湯(どっかつかっこんとう)です。聞きなれない漢方薬かもしれませんが、一般用漢方薬として市販されています。

カゼをひいたときに服用する葛根湯と似た処方名ですが、使用の目的は異なり、葛根湯の代用としては用いません。
葛根湯の仲間?と思わせるような独活葛根湯。その効能と使い方についてお伝えします。

肩・首のこわばりに効く生薬

葛根湯といえば、寒邪が侵入して肩から項部(首の後ろ)にこわばりを感じる悪寒、発熱、頭痛などの症状に効果があります。

葛根湯の7つの生薬に独活(どっかつ)、地黄(じおう)という2つの生薬を加えたのが独活葛根湯。葛根湯の生薬配合量は減っているので効能は変わるのですが、ベースの葛根湯と同様に肩と首のこわばりにはたらきかけます。

主薬である独活(どっかつ)は冷えと湿気による筋肉のこわばりや痛み、しびれを除く効果があり、リウマチ・筋肉痛・頭痛などに使われます。

地黄(じおう)は筋肉の血流をよくして潤す効果がありますので、筋肉痛、こわばり、関節の動きを改善します。

寝違えや血行不良の肩関節痛
葛根湯に独活と地黄を加えた独活葛根湯の効果は、とくに肩関節・肘関節などの上肢と、肩・首の筋肉に適用します。冷えや湿気によって起こる筋肉と関節の痛み、こわばり、しびれを改善します。

たとえば、朝起きたら首が回らない寝違いや、冷えて血行がわるく肩がこって首を動かすと痛いものなどに使われます。
寝違えは冬や梅雨時期、冷たい雨の日などに起こりやすく、寒邪・湿邪の影響を受けています。独活葛根湯は、寒湿の邪を除き肩と首の血行をよくして症状を改善します。

また、肩・首・背中の局所的な血行不良があれば用いることができますので、四十肩・五十肩にも応用されます。

一時的な筋肉痛・関節痛に使用
適切に服用していただくための注意点をいくつか挙げます。

独活葛根湯は寝違えや寒さ・湿度といった気候により起こる一時的な痛みに用いるのが一般的です。四十肩・五十肩の関節痛や運動障害にも応用されますが、その場合は初期に用い、服用期間は20日くらいまでとしてください。

温める性質の漢方薬ですので、患部を温めると楽になるような痛みに使います。入浴で温まるとひどくなる痛みの場合は使用を控えましょう。

肩から項部(首の後ろ)にこわばりを感じたとしても、悪寒・発熱を伴うカゼは葛根湯を使用し、独活葛根湯はカゼの初期症状に対しては用いません。

配合されている地黄(じおう)は胃腸虚弱の人の場合、ややもたれることがあります。服用後に腹痛、下痢、食欲不振などの不調が起こるようなら服用を中止するか、食後の服用に変えて様子をみましょう。

最後に、慢性的な肩・首の痛みや、四十肩・五十肩が長く続いているときは、ほかの漢方薬を検討しますので漢方専門の薬局や医療機関に相談していただきたいと思います。

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飯田勝恵 肩こり
飯田 勝恵
飯田 勝恵 - Katsue Iida[薬剤師・薬日本堂漢方スクール講師]

静岡県立大学薬学部卒業。1998年薬日本堂入社。約10年間の臨床と店長を経験。店舗運営や相談員教育などに携わり、その後「自然・人・社会に役立つ漢方の考えをより多くの人に伝えたい」と講師として活動。薬だけではない漢方の思想や理論に惹かれ、気功や太極拳、瞑想なども生活に取り入れながら漢方・養生を実践している。

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