漢方ライフ読む(コラム一覧) > 頭痛・めまいを伴う高血圧~釣藤散
公開日:2025.03.21 更新日:2025.03.21394view

頭痛・めまいを伴う高血圧~釣藤散

漢方薬のつぶやき vol.29

疲労や多忙による高血圧
肥満、脂質異常症、動脈硬化などの生活習慣病から引き起こされることが多い高血圧。しかし、そういった生活習慣病がなくても加齢とともに血圧は高くなる傾向があります。さらに、日頃は問題ない血圧が、疲労や忙しさ、ストレスによって一時的に上がるケースも見られます。

生活習慣病から起こる高血圧症であれば、もととなる疾病の治療をしながら血圧の改善をはかります。ところが原因となる肥満や脂質異常症などがなく、普段は正常な血圧が一時的に上がってしまった場合には、対処に困ることも多いのではないでしょうか。

今回は高血圧とその随伴症状である頭痛、めまいなどに使われる漢方薬、釣藤散(ちょうとうさん)についてお伝えします。

血圧上昇のサインを知る
血圧は自覚症状なく知らず知らずのうちに高くなり、健康診断で初めてわかるというケースが少なくありません。しかし、よく体を観察していると、血圧上昇のサインとなる不調があります。

肩や首筋のこり、後頭部が重く感じる、頭痛、めまい、耳鳴り、のぼせ。
これらは血圧が上がっているときにあらわれる症状です。

症状は体からのサイン。肩こり、頭痛、めまいの原因はさまざまありますが、血圧が高くなったときにも起こりうる症状です。高血圧が見過ごされてしまわないように、自分の体がどんなサインで血圧上昇を知らせるのかを知っておくことも大切です。

釣藤散の効果・効能
釣藤散は「体力中等度で、慢性に経過する頭痛、めまい、肩こりなどがあるものの次の諸症:慢性頭痛、神経症、高血圧の傾向のあるもの」に用います。

釣藤散が適用になる高血圧は、40代以降に起こりやすく、多忙や寝不足により疲労がたまっている状態に、ストレスや緊張が加わることで血圧が高くなるタイプです。

体質・体調としては、肌にツヤがなく乾燥気味、目の乾き・疲れ・充血が起こりやすい、のぼせて頬が少し赤みをおびている。精神的にはイライラしやすい、怒りっぽい、あるいは鬱っぽく、不眠の傾向があります。

過労と心労が重なったことによる高血圧で、頭痛・めまいなどの症状を伴うときに使われます。

肝を整え血圧を正常に
漢方の考え方では、釣藤散は肝(かん)の不調から起こる高血圧に効果があります。
肝は血(けつ)を蓄え、気を巡らせます。一般的にいう自律神経の働きにも関係します。

釣藤散は肝に働きかけ、血を養い気の流れを調整することで、血圧を正常に導き、頭痛やめまい、耳鳴りなどの随伴症状も改善します。

ところで、漢方の五行説では季節と内臓の関係を説いています。春は肝が活躍する季節。春を順調に過ごすには肝の安定が不可欠ですが、春に過労・心労があると肝の働きが乱れます。

ですから、血圧が気になる人は、春はとくに気をつけたいです。何かと慌ただしいこの季節、焦りや緊張が過度にならないよう気分転換とストレス発散を心がけ、睡眠をおろそかにしないようにして肝を労わりましょう。

最後に。今回ご紹介した釣藤散は肝の不調から起こる高血圧に効果があります。しかし高血圧の原因はほかにもありますので、原因と体調・体質に応じて適切な漢方薬を選ぶことが大切です。高血圧が気になる方は、漢方専門の薬局や医療機関で相談するようにしましょう。


飯田 勝恵
飯田 勝恵 - Katsue Iida[薬剤師・薬日本堂漢方スクール講師]

静岡県立大学薬学部卒業。1998年薬日本堂入社。約10年間の臨床と店長を経験。店舗運営や相談員教育などに携わり、その後「自然・人・社会に役立つ漢方の考えをより多くの人に伝えたい」と講師として活動。薬だけではない漢方の思想や理論に惹かれ、気功や太極拳、瞑想なども生活に取り入れながら漢方・養生を実践している。

漢方スクールでの担当コース・セミナーはこちら

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

ページトップへ