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公開日:2025.01.21 117view

家庭の常備薬に~紫雲膏

漢方薬のつぶやき vol.27

漢方にも外用薬があるのをご存じでしょうか?
薬局製剤としての外用薬に数種類ありますが、もっともよく使われるのが紫雲膏(しうんこう)です。きれいな処方名ですね。
江戸時代の外科医、華岡青洲が中国書物に記載されていた軟膏薬を基に処方し、命名したとされています。

紫雲膏は家庭に備えておきたい漢方薬のひとつ。漢方スクールで学ばれている生徒さんも、紫雲膏を知ると常備薬に加える人が多いです。そんな紫雲膏の効能と使い方についてお伝えします。

天然の紫色
上の画像が紫雲膏です。初めて見る人は紫色の軟膏に驚きます。鮮やかな紫は生薬の天然の色です。
軟膏の隣にあるのがムラサキ科ムラサキの根、「紫根(しこん)」という生薬。画像では色合いがわかりにくいのですが紫色をしています。

紫雲膏は紫根と当帰(とうき)を主薬とし、胡麻油・蜜蝋・豚脂を加えて作られます。

紫根は、熱を鎮めて化膿を防ぐ効果があります。いわゆる抗炎症作用、殺菌作用、傷の癒合を促進する作用です。
当帰は、皮膚の材料である血(けつ)を養い、肌を潤すとともに、皮膚の再生を促します。
胡麻油、蜜蝋、豚脂は皮膚に潤いを与えます。

アトピー性皮膚炎や火傷に
紫雲膏の効能は広く、「ひび、あかぎれ、しもやけ、魚の目、あせも、ただれ、外傷、火傷、痔核による疼痛、肛門裂傷、湿疹・皮膚炎」に使われます。

効果のポイントは、「熱を冷ます」「皮膚を潤す」の2つです。
皮膚に炎症があって、赤くなっていたり、熱感を持っている状態。たとえば、アトピー性皮膚炎や湿疹で患部が赤みを帯びているときです。加えて皮膚が乾燥してカサカサ、ひび割れのある状態にも適しています。

また、火傷の応急処置としてはとくに効果が高く、それゆえ皮膚トラブルがない人にとっても常備薬としておすすめです。
お湯が手にかかってしまったり、熱いものをさわってしまったとき。まずは水で冷やしますが、それでも皮膚がヒリヒリして痛みがあるときに紫雲膏をつけると痛みがやわらぎ、回復が早くなります。



化膿や分泌物が多いものは不適
漢方の外用薬のなかでもっとも使われる機会が多い紫雲膏。皮膚病のほか、ちょっとした虫刺されや擦り傷、日焼け後の肌の赤みやヒリヒリ感にも効果があります。大人だけでなく子供にも使用できますので、家庭の常備薬としておすすめです。

ただ、皮膚のトラブルにもさまざまな状態がありますので、すべてに紫雲膏が適用するわけではありません。
紫雲膏は「熱を冷ます」「皮膚を潤す」効果があることを前述しました。赤くなっていて、どちらかというと乾燥気味の状態に適しています。

すでに化膿している、化膿がひどい、水泡がある、分泌物が多いなどの場合には適しませんのでご注意ください。

また、紫雲膏の成分である胡麻油や豚脂などの油脂は経年で酸敗しますので、常備薬として保管期間があまり長くなったものは新しいものに換えましょう。

紫雲膏の紫色は衣類や布団に着色すると洗濯しても取れにくいことがあります。気になるときは塗布した箇所をガーゼ等で覆うなどされるとよいと思います。

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飯田勝恵 漢方薬 紫雲膏
飯田 勝恵
飯田 勝恵 - Katsue Iida[薬剤師・薬日本堂漢方スクール講師]

静岡県立大学薬学部卒業。1998年薬日本堂入社。約10年間の臨床と店長を経験。店舗運営や相談員教育などに携わり、その後「自然・人・社会に役立つ漢方の考えをより多くの人に伝えたい」と講師として活動。薬だけではない漢方の思想や理論に惹かれ、気功や太極拳、瞑想なども生活に取り入れながら漢方・養生を実践している。

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