- 齋藤 友香理 - Yukari Saito[薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師]
1969年北海道生まれ。東京理科大学薬学部卒業後、薬日本堂入社。10年以上臨床を経験し、平成20年4月までニホンドウ漢方ブティック青山で店長を務めていた。多くの女性と悩みを共有した実績を持つ。講師となった現在、薬日本堂漢方スクールで教壇に立つかたわら社員教育にも携わり、「養生を指導できる人材」の育成に励んでいる。分かりやすい解説と気さくな人柄で、幅広い年齢層から支持されている。
疲れと免疫力の関係~なぜ疲れるとカゼをひく?
漢方であなたを応援vol.33「疲れと免疫力」
毎年、年末年始の忙しい頃に、「疲れがたまってカゼをひいた」という声を耳にします。なぜ疲れがたまるとカゼをひくのでしょう?
人は頑張って活動しすぎると疲れを感じるようになっています。疲れの感じ方は、身体を動かし過ぎて疲労する人、精神の使い過ぎで疲労する人、もともと虚弱で何をしてもすぐに疲れてしまう人などさまざまです。
年末年始、いつもは手が届かない場所を入念に掃除したり、普段会えない人と久しぶりに集まったり、集中して仕事を終わらせたり、いつもと違うことが重なります。それが疲れとしてあらわれます。
漢方では、エネルギーである気(き)と栄養と潤いの液体である血(けつ)が不足すると疲れると考えます。人間関係などで疲れるのは、まさに「気をつかう」からです。
気のバリア「衛気(えき)」が身体を守る
気は生命エネルギーで、5つの働きがあります。
①ものを動かす・・・血液循環や新陳代謝など、全ての活動
②身体を温める・・・体温を維持する
③防御する・・・身体の外表面を守る
④変化させる・・・飲食物の消化吸収と代謝
⑤キープ力・・・漏れや内臓の下垂を防ぐ
③の防御を担う気のことを、特別に「衛気(えき)」と呼びます。この力が弱いと、細菌やウイルスなど外からの攻撃に耐えられず感染症やアレルギーなどの症状が起こります。
現代医学的に考えると、「免疫力が低下している」とも言い換えることが出来るでしょう。
免疫とは、体外からの侵入者である抗原(細菌やウイルスなど)に対して免疫細胞などが「自分」と「自分でないもの」を識別して、身体を守る仕組みのこと。免疫細胞が正しく機能していれば、免疫力を発揮できると考えます。
気を消耗して疲れている時は、衛気も不足しがちなので、免疫細胞の活動も鈍り、カゼや感染症などにかかりやすいということになります。
逆に、気の消耗を防いで衛気を充実させれば、カゼの予防が出来るということでもあります。
あなたの疲れタイプはどちら?
疲れは大きく2つに分類できます。
1)消耗タイプ
過度の肉体労働、頭脳労働、気遣い、加齢で、元気のエネルギーと栄養を使いすぎている
□夜ふかしをしがちで睡眠不足
□身体を動かす時間が長い
□細かいことに気を配り神経を使っている
□目や脳を酷使している
□夜になると特に調子が悪い
2)生産不足タイプ
胃腸虚弱や飲食の不摂生で、元気のエネルギーと栄養を補充できていない
□胃腸が弱く、食欲がわかない
□食後すぐに眠くなる
□食事内容に偏りがある
□朝、寝起きが悪い
□もともと虚弱体質
消耗タイプは、日頃から無理をせず休養することが大切です。生産不足タイプは、身体を冷やさないように注意し、しっかり噛んで食事することが大切です。
疲れを癒やし、免疫力を高める養生
気の消耗を防ぎ補充するために、次のことを意識して過ごしましょう。
■日付が変わる前に就寝する
睡眠は目や脳、身体の活動を減らして消耗を防ぐことに直結します
■手足の先、腰や腹部を冷やさない
温めるために余分な気を使うことで衛気に回す量が減ってしまいます
■考えすぎずに気分転換
思い悩みすぎたら気分転換でリフレッシュ
大きくのびをしたり、アロマの香りで癒しましょう
■朝食は温かく消化しやすいものを食べる
ご飯と汁物がベスト、甘酒もおすすめです
高麗人参とナツメを漬けた薬膳酒は、疲労回復に有効です。シナモンと生姜、八角を漬けた薬膳酒は、冷えの解消とカゼの予防にも有効。ぜひ試してみてください。
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