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公開日:2024.12.09 367view

おせち料理で見つけた!薬膳ライフ

暮らしに潜む!漢方よもやま話 vol.4

「おせち」は神様へのお供え物?

12月に入り、年の瀬も間近となってきました。
皆様は、どのように年末年始をお過ごしになられるのでしょうか。
さて、お正月と言えば…「おせち料理」の出番です!
そもそも「おせち料理」は、なぜお正月に食べられるようになったのでしょう?
今回は、この「おせち料理」を探訪していきたいと思います。

「おせち料理」の「おせち」という言葉ですが、これは「御節供(おせちく)」という言葉からきていているようです。
もともとはお正月だけではなく「桃の節句」や「端午の節句」など一年に5回ある季節の節目を祝うお料理で、古来の人々は、この日に神様をお迎えし供に食事していました。
そして、そのうち最も大切な日である年のはじめに食べる料理だけが「おせち」と呼ばれるようになりました。

おせち料理は陰陽五行

現代では一年のはじまりに家族の健康と繁栄を願いながら新年を祝う「おせち料理」ですが、もとは中国の陰陽五行に根ざし、漢方的に見ても理にかなった薬膳なのです。

自然界のあらゆる物事は「木・火・土・金・水」の五つから成り立って、それぞれが深く関係しあいながらバランスをとっている。
この考えが五行説です。

古来の人々はこの考えに基づき、「色・味・季節・方角・感情」など、自然界のあらゆる事象をこの五つに分けて考えました。
さらに、これを身体のはたらきに対応させたものを五臓と言い「肝、心、脾、肺、腎」という5つのグループであらわされます。

そして、おせち料理にはこの五つの要素が実に見事に組み合わされているのです。

おせち料理の五色バランス

"五行にあてはめられている色は「青・赤・黄・白・黒」の五つです。
この五色は古来より魔除けの意味があり、七夕の短冊やこいのぼり吹き流しはこの色を組み合わせています。
寺社や相撲の土俵でも黄色を中央に東西南北の方角に合わせてこの色を目にしますね。
そして、おせち料理にもこの色が使われています。

・木―青(緑)・・・若桃の甘露煮 など
・火―赤・・・紅白なますの人参、海老 など
・土―黄・・・栗きんとん、だし巻き、数の子 など
・金―白・・・紅白なますの大根、里芋 れんこん など
・水―黒・・・黒豆、昆布 ごぼう など

また、五色をバランスよく食することは五臓パワーを補うことにもつながります。



おせち料理は冬を乗り切る薬膳
漢方では、寒い冬は五臓の腎パワーが衰える季節と考えられています。
腎は生命力を蓄えている大事な場所。
冬にいただくおせち料理には、腎パワーを高めてくれるメンバーがたくさんいます。

◆黒豆
肝腎を養い、血を補い血めぐりや水めぐりもよくしてくれる優れもの。
「今年もまめに働けますように」という願いを込めて使われます。

◆海老
肝腎を養い、身体を温めるのが得意。気血を補ってめまいやふらつきが気になるときに活用したい食材です。
「腰が曲がるまで長生きする」ことを願って使われます。

◆栗
脾腎を養い心身ともにパワーを養う食材で疲れや足腰のだるさ、頻尿に応用できます。
栗きんとんの黄金色は「輝く財宝」に例えられています。

◆くるみ
肺腎を養い腰痛や耳鳴り、咳が気になるときに使いたい食材です。腸も潤して便通もバッチリ。
「五穀豊穣」と「家庭円満」の願いが込められています。

◆昆布
肝脾腎を養い身体の熱を冷まし身体に溜まった余分な水分もとるのでむくみの解消に効果的です。
昆布巻きの昆布は「よろこぶ」の言葉にかけられていて大変縁起の良い食材です。

おせち料理には、そのひとつひとつに「今年も元気で幸せに暮らしていけますように」という多くの願いが込められています。
新しい年も無病息災
皆様にとって幸せな一年でありますように。

山吹 育恵
山吹 育恵 - Ikue Yamabuki[薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師]

東北医科薬科大学を卒業後、病院勤務を経て1990年薬日本堂入社。 2011年までニホンドウ漢方ブティック仙台トラストシティ店で店長を務めた後、20年の臨床経験を活かし、漢方スクールの講師と社内相談員の学術支援に携わる。大自然の力に魅せられ、自然農の考えに触れたことをきっかけに15年前より自らも農業を実践中。

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