- 飯田 勝恵 - Katsue Iida[薬剤師・薬日本堂漢方スクール講師]
静岡県立大学薬学部卒業。1998年薬日本堂入社。約10年間の臨床と店長を経験。店舗運営や相談員教育などに携わり、その後「自然・人・社会に役立つ漢方の考えをより多くの人に伝えたい」と講師として活動。薬だけではない漢方の思想や理論に惹かれ、気功や太極拳、瞑想なども生活に取り入れながら漢方・養生を実践している。
鼻水・鼻づまりの3大漢方薬
漢方薬のつぶやき vol.18
鼻の通りは全身の健康に影響
アレルギー性鼻炎、花粉症、副鼻腔炎の主症状である鼻水・鼻づまり。
一時的であれば日常生活でわずらわしさを感じる程度で済みますが、慢性化すると、頭痛、顔の熱感・痛み、後鼻漏による咽の炎症や咳、嗅覚障害などを引き起こすこともあります。
鼻水・鼻づまりのため無意識に口呼吸になり、歯と歯茎の不調や口臭など口腔内にも支障が。さらに、不自然な呼吸が疲れやすさや免疫の低下を招きます。
鼻の健康は全身の健康状態にも影響します。
繁用される3つの漢方薬
症状が慢性化したり、繰り返していると、全身の健康にも影響するため、早めに改善したい鼻の症状。
鼻水・鼻づまりに用いる漢方薬は多数ありますが、3大漢方薬ともいえるのがこちら。
小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)
辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)
これら3大漢方薬の使い分けを
2つの視点でみてみます。
鼻水か?鼻づまりか?
ひとつめの視点は、鼻水の粘性です。
鼻水は、サラサラと流れるものもあれば、粘り気があってベタベタしているもの、塊になって鼻がつまってしまうものといった違いがあります。
この粘性の違いは体の状態を反映していますので、漢方薬の選択において大切な情報のひとつです。
鼻水がサラサラとして鼻をかんでもまた流れでてくる場合は小青竜湯。
粘りがあってかたまったり、鼻づまりを起こしているような場合には辛夷清肺湯が使われることが多いです。
葛根湯加川芎辛夷は鼻水もでるけれど、鼻水がたまってつまっている状態にも使われます。
鼻水は白色か?黄色か?
2つめの視点は、鼻水の色です。
鼻水は透明、白っぽい、黄色いものがあります。
透明から白っぽい鼻水がたくさん流れでてくるときには小青竜湯。
基本は透明から白だけれど、少し黄色も混ざる場合には、葛根湯加川芎辛夷も候補に。
黄色く粘り気のある鼻水、かさぶたのような塊になる、鼻水というより鼻がつまるのが辛いときには辛夷清肺湯が使われることが多いです。
粘性と色の意味
お伝えした2つの視点、鼻水の粘性と色は体の冷えや熱の目安になります。
体に冷えがある場合には、鼻水はサラサラと流れでて、色は透明から白に。
体に熱がこもっていると、鼻水に粘り気が生じ、濃い黄色になります。
小青竜湯と葛根湯加川芎辛夷は、体を「温めて」、鼻水・鼻づまりを改善していきます。
辛夷清肺湯は、肺にこもった「熱をとり除いて」、鼻づまりを改善し鼻が通るようにします。
冷えなのか?熱なのか?これを区別する指標のひとつが、鼻水の粘性と色です。
「鼻水・鼻づまり」、言葉にすると一見同じ症状であっても、一律同じ薬ではなく、その原因と状態に応じて漢方薬を使い分ける。
漢方薬の理解されにくい面ではありますが、体にとっては理にかなった考え方です。
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