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公開日:2023.12.20 更新日:2024.01.101945view

胃もたれ・消化不良に~平胃散

漢方薬のつぶやき vol.14

胃をやすらかにする漢方薬
胃腸トラブルに使われる漢方薬はたくさんあります。
今回はその中のひとつ、平胃散(へいいさん)を紹介します。

会食でつい食べすぎて、胃が張って苦しい、胃のもたれを感じるとき。
ビールの飲みすぎでお腹が冷えてゴロゴロ鳴り、軟便になったとき。

このように、過飲食によって胃がもたれ、消化不良をおこしているときに平胃散が使われます。
「胃の不調を平(やす)らかにする」ことから、平胃散と名付けられました。

湿と気滞が不調につながる
平胃散は、「湿」と「気滞」を治す処方です。

湿気が多い、といいますが、湿気は環境だけでなく体内にも発生します。
梅雨時期や雨の日に湿度が高いと、身体が重だるくなりませんか?
からだの中にも湿気がたまるからです。

湿気が胃腸にたまると、胃がもたれて、食欲不振、軟便や下痢になります。舌に白くて厚い苔がつくのも特徴です。

気滞とは、気の滞りです。
胃に食べ物が入ると、初期の消化をして小腸に送ります。
飲食物を消化し、消化物を小腸へ降ろすためには、気がスムーズに流れていることが大切。消化は気の流れによって促進されます。

気が滞ると消化不良となり、胃の内容物が小腸へ降りていかないため、お腹が張って苦しくなり、ひどいと吐き気をもよおします。

チームワークで消化力を高める
平胃散には6つの生薬が配合されています。

蒼朮(そうじゅつ)は、湿気を強力にとり除く生薬です。
香りのよい厚朴(こうぼく)と陳皮(ちんぴ)は、気を巡らせお腹の張りをとります。
生姜(しょうきょう)は胃を温めて湿気を除くとともに、吐き気を鎮めます。
大棗(たいそう)と甘草(かんぞう)は胃腸を元気にします。

これら生薬のチームワークにより消化を促進し、胃もたれ、お腹の張り、吐き気、食欲不振、軟便・下痢を改善します。

旅行先や梅雨時期にも
家族・友人・職場の人との会食が増える年末年始やお盆には平胃散を服用する機会が多くなります。
ほかには、旅行先で地域のお料理や新鮮な食材を振舞われ、いつもより食事量が多くなってしまったとき。

また、湿度が高く胃腸のはたらきが低下しがちな梅雨や夏場は、いつも通りの食事量であっても消化しきれず、結果として食べすぎの状態になることがあります。
このようなときにも平胃散を活用できます。

適切に服用するための注意点
平胃散を適切に用いるための注意点をお伝えします。

適用となる症状はすでに述べた通りですが、「食べすぎ飲みすぎ」のすべてに使われるわけではありません。
目安のひとつは、舌の苔が白くて厚くなっていることです。
白い苔は冷えている証拠、厚い苔は湿気や未消化物が多いサインです。
舌の苔が黄色のときは、ほかのより適した漢方薬を選びます。

それと、普段から胃腸虚弱で、慢性的に胃もたれ、お腹の張り、吐き気、食欲不振、軟便・下痢が続いている場合には平胃散の適用ではなく、症状と体質に合った別の漢方薬を検討します。


最後に。
平胃散を知ると、「これがあれば食べすぎても安心!」と思ってしまうかもしれません。心強い漢方薬ですが、安易に頼ることなく、基本は、『一に養生、二に薬』です。
胃は満腹を嫌いますので、平素、腹八分を心がけましょう。

動画でも!「会食が多い時期に強い味方!胃もたれ・消化不良に~平胃散」


飯田 勝恵
飯田 勝恵 - Katsue Iida[薬剤師・薬日本堂漢方スクール講師]

静岡県立大学薬学部卒業。1998年薬日本堂入社。約10年間の臨床と店長を経験。店舗運営や相談員教育などに携わり、その後「自然・人・社会に役立つ漢方の考えをより多くの人に伝えたい」と講師として活動。薬だけではない漢方の思想や理論に惹かれ、気功や太極拳、瞑想なども生活に取り入れながら漢方・養生を実践している。

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