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公開日:2022.04.25 更新日:2022.04.252103view

不眠は夜だけの問題ではない

眠りと漢方~眠れぬ夜のために vol.11

快眠対策は朝から始まっている
不眠症を改善しようとしたときに、夜だけに着目してどうにかしようとする傾向があると感じます。

「陰陽は互いに依存していてどちらか一方だけでは存在できない」
これは陰陽論の法則のひとつです。
陰だけ、陽だけ、のように一方だけでは存在できませんので、不眠症を改善する際には、夜だけでなく陽の時間である日中の過ごし方も大切。

漢方では不眠症を夜だけの問題とするのではなく、朝から始まる生活全体の陰陽バランスもみて対策をします。

順応四時(じゅんのうしじ)で陰陽バランスを整える
一日や一年という時間には“四時(しじ)”という流れがあります。
一日は朝・昼・夕・夜という四刻、一年は春・夏・秋・冬という四季がありますね。

四時のリズムに順応することを「順応四時」といい、これにより生活の陰陽バランスを保つことが身体の陰陽バランスを整えることにつながります。

快適な睡眠を求めるならば四時に順応した生活を送ることを意識しましょう。
一日の流れに沿って快眠の養生ポイントをいくつか挙げてみます。

好きなこと、ご機嫌になることをしよう
まず起床時刻は一定にしてリズムを保ちましょう。
体内時計は朝の太陽光と規則的な朝食リズムでリセットされます。

食と睡眠は深い関係があります。
朝食か昼食かわからないような時間帯に食べると体内時計は混乱。
朝食は9時頃までに済ませるのが理想です。

また、睡眠にかかわるホルモンも、食べたものから作られますので、バランスのよい食事は眠りの質を高めます。

陽の時間である日中は活動をして気分も陽に。
好きなこと、ご機嫌になることを生活に散りばめて自分を楽しませることが大切です。

私たちは頭を使って神経が高ぶり、疲れている傾向があります。
素足で砂浜を歩く、自転車に乗るなど最近していない動きで体感を楽しんだり、いつもとは異なる行動をして疲れてみるなど、心が感動する、体感が刺激されるような活動を取り入れたいです。

夕方以降は意識的に陰の時間を演出
陰の時間である夕方以降は陰の行動。
夜にお腹いっぱい食べたり、消化しにくいものを摂ると睡眠を妨げますので、夕食は早め軽めを心がけましょう。

夕食後は就寝に向かっていく時間。
部屋の照明を暖かみのある色に変え、気持ちが落ち着く音楽を流すなどリラックスできる環境をつくり意識的に陰を演出しましょう。
テレビ、パソコン、スマートフォンなどの画面を見過ぎると眠りを妨げますので、ほどほどに。

日中の習慣的な姿勢や精神的な緊張・疲労によって身体に偏りが生じています。
入浴で身体を温めるとともに自律神経を整え、さらにストレッチをして気血の流れを整えてから就寝。
眠れなくても0時までにはお布団に入って横になる習慣をつくりましょう。

漢方の知恵で睡眠の悩みを解消
不眠症改善のヒントとなる漢方の知恵をお伝えしてきたコラム『眠りと漢方』は今回が最終回。

睡眠には、身体の陰陽バランス、生活の陰陽バランスがかかわっています。
また、季節や年齢によって眠りの質が変化します。
これらを知っておくと、焦りや不安が和らぐとともに、不眠を長引かせない対処につながります。

このような漢方の視点と知恵を不眠症の改善だけでなく、日々を元気に過ごすことに活かして頂ければ幸いです。

飯田 勝恵
飯田 勝恵 - Katsue Iida[薬剤師・薬日本堂漢方スクール講師]

静岡県立大学薬学部卒業。1998年薬日本堂入社。約10年間の臨床と店長を経験。店舗運営や相談員教育などに携わり、その後「自然・人・社会に役立つ漢方の考えをより多くの人に伝えたい」と講師として活動。薬だけではない漢方の思想や理論に惹かれ、気功や太極拳、瞑想なども生活に取り入れながら漢方・養生を実践している。

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