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公開日:2022.03.25 更新日:2023.11.102056view

「昔のように眠れない」、更年期に訪れる睡眠の変化

眠りと漢方~眠れぬ夜のために vol.9

身体の陰陽バランスが変化
「睡眠で休養が取れていない」「不眠がある」と答える人は加齢とともに増加し、60歳以上では約3人に一人が睡眠に悩みをもっています。

女性は7の倍数、男性は8の倍数で身体が変化する中、女性49歳、男性56歳を基準として前後10年間位が更年期にあたり、とくに体調が変化しやすい時期。
「昔のように眠れない」との声を聴くことがしばしばあります。

漢方では、年齢を重ねることで身体の陰陽バランスが変化し、睡眠に影響すると考えます。

熟睡できず満足感が得られない
寝つくのに時間がかかる、眠りが浅い、朝早く目が覚める。
身体の陰陽バランスの崩れによって、顔や手足がほてる、口が渇きやすい、寝汗をかく、夜間尿が増える、足腰がだるいなどの不調を伴うことがあります。

更年期以降に多くみられる不眠症は、熟睡感がない上に睡眠時間も短くなる傾向があるため、起床時に満足感が得られないのが特徴です。

そのため疲労感が残り、昼間うつらうつらしたり、ぼんやりして行動する意欲が湧かず、日中の活動に支障がでることも。

生活リズムに陰陽のメリハリをつける
眠れないことで疲労を強く感じる場合は、日中の活動を控えて休むことも必要ですが、それが毎日続くと生活リズムに陰陽のメリハリがなくなり、かえって不眠が長引いてしまうことがあります。

人の身体は自然のリズムと呼応しています。自然のリズムとは陰陽のリズム。
陰の時間である夜に眠れない「不眠症」とは、陰陽バランスの崩れといえます。

「陰の時間に陰の行動、陽の時間に陽の行動」という自然のリズムを保つことが養生の基本ですから、陽の時間には陽の活動をして生活リズムにメリハリをつけることが大切です。

太陽は陽のエネルギー。
日中、太陽のもと散歩をするなど出来る範囲で陽の時間に活動するようにしましょう。

昔の睡眠と比べない
「以前に比べて熟睡できず睡眠に満足感がない」
こう訴える人の中には活動的な人が多いと感じます。

日中の体調や活動にさほど支障がないように見えるのですが、本人にとっては以前と同じように活動するために必要な睡眠を得たいという気持ちなのでしょう。

年齢とともに身体が変化するように、睡眠が年齢によって変化するのはある程度自然なことでもあります。
日中の活動に大きな支障がなく、ある程度疲れが癒されている場合には、よしとする心の置きどころも大切です。

現在の睡眠で得られるエネルギーに応じて日中の活動量を調整するという考え方もできます。
活動(陽)と休息(陰)の生活バランスを見直し、変化している身体を守るためのサインかもしれません。


飯田 勝恵
飯田 勝恵 - Katsue Iida[薬剤師・薬日本堂漢方スクール講師]

静岡県立大学薬学部卒業。1998年薬日本堂入社。約10年間の臨床と店長を経験。店舗運営や相談員教育などに携わり、その後「自然・人・社会に役立つ漢方の考えをより多くの人に伝えたい」と講師として活動。薬だけではない漢方の思想や理論に惹かれ、気功や太極拳、瞑想なども生活に取り入れながら漢方・養生を実践している。

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