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公開日:2021.09.25 更新日:2022.05.094030view

未病に気づく、舌診でセルフケア

舌は口ほどに物を言う ~舌診の話 Vol.15

舌が語る情報
このコラムでは、舌の観察において特に多く見られる舌の状態と、その意味についてお伝えしてきました。
今回が最終回。
舌診を日々活かしていただくためにこれまでお伝えした内容を簡単にまとめます。

舌の観察によってわかることは大きく3つです。

自覚していない不調を教えてくれる
①身体の寒熱
“寒がり“、“暑がり“を自覚できていれば養生の対処ができるのですが、自覚していないのに実は身体が冷えてる、熱がこもっているということがあります。
舌の状態から身体が冷えているか、熱をもっているかに気づくことができます。

舌質(舌本体)の色が白っぽいと冷えています。
白に青紫の色合いが加わると冷えが強く、血流も悪くなっていることが考えられます。
また、苔が白くて厚い場合にも冷えがあります。

舌質(舌本体)が濃い赤、あるいは苔が黄色である場合は身体に熱がこもっています。

②気血水の充実度と巡り
私たちの身体は、気血水が充実していてしっかり巡っていれば体調が良く、反対に気血水の不足や滞りがあると体調不良が起こります。
辛い症状があらわれる前に、気血水の不足や滞りに気づいて養生に活かしましょう。

舌が薄くて小さい、ひび割れがある、歯の痕がついている、苔が剥がれているなどの場合は、気血水が不足してエネルギー不足・栄養不足の状態です。
自分がもっている気血の量、つまり体力を越える活動を続けないように休息を大切にしてください。

舌先が赤くなりプチプチしているのは気の滞りがあることを示し、精神的な緊張やストレスの強い状態が続いています。
気分転換やリラックスを心がけましょう。

舌がぽってりとして大きい状態や、苔が厚いのは水の滞りがあります。
冷たいものは控えめに温かいものを飲食し、食事の味付けが濃くならないように気をつけてください。

③胃腸の元気度
苔の色と厚さは、飲食物の摂り方と胃腸の状態を反映しています。

舌がぽってりと大きく、歯の痕がついているのは胃腸が弱っているサインです。
苔が厚いのは水の滞りや過食による未消化があり、胃腸に負担がかかっています。

薄くて白い苔が健康的ですので、それを目安に食生活を整えましょう。
苔は舌質(舌本体)に比べて変化が早いため、体調の判断と養生に活かしやすいです。
苔の色が「黄色から白に」「厚い苔が薄い苔に」変化していれば回復傾向です。

舌を通して身体と向き合う
私たちの身体は起こっている不調をなんらかの形で知らせてきます。
大切なのはその“お知らせ”に気づくこと。

身体からの声に耳を傾けて不調のサインを早めにキャッチする。
その手段のひとつとして舌を診ることが役立つと思います。

舌にあらわれている情報から身体の状態や体調の変化に気づき、食生活や活動と休息のバランスを調整して心身をケアしていきましょう。

コラム『舌は口ほどに物を言う』をお読みくださりありがとうございました。
顔色を観て体調を推し量るのと同じように手軽に日常的に、漢方の舌診をセルフケアに活かしていただければ幸いです。

飯田 勝恵
飯田 勝恵 - Katsue Iida[薬剤師・薬日本堂漢方スクール講師]

静岡県立大学薬学部卒業。1998年薬日本堂入社。約10年間の臨床と店長を経験。店舗運営や相談員教育などに携わり、その後「自然・人・社会に役立つ漢方の考えをより多くの人に伝えたい」と講師として活動。薬だけではない漢方の思想や理論に惹かれ、気功や太極拳、瞑想なども生活に取り入れながら漢方・養生を実践している。

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