- 齋藤 友香理 - Yukari Saito[薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師]
1969年北海道生まれ。東京理科大学薬学部卒業後、薬日本堂入社。10年以上臨床を経験し、平成20年4月までニホンドウ漢方ブティック青山で店長を務めていた。多くの女性と悩みを共有した実績を持つ。講師となった現在、薬日本堂漢方スクールで教壇に立つかたわら社員教育にも携わり、「養生を指導できる人材」の育成に励んでいる。分かりやすい解説と気さくな人柄で、幅広い年齢層から支持されている。
夏の渇きと疲れを癒やす「酸梅湯」と「梅醤番茶」
季節を感じて気軽に薬膳 vol.6
陽が極まり暑さが増してくる「夏至」
二十四節気の夏至、梅雨空のせいで実感しづらいですが、一年で最も昼の時間が長い日です。
太陽がのぼった明るい時間を陽、太陽が沈んだ暗い時間を陰と考えると、夏至は陽が極まる日ともいえます。
既に季節は夏で、梅雨が明けると本格的に暑くなります。
今年もコロナ禍でマスクが外せない夏を過ごさねばなりません。
コロナ感染対策と併行して、熱中症対策も心がけましょう。
胃腸の状態を整えて潤いを生み出す梅
夏至の直前、七十二候では「梅子黄~梅の実、黄ばむ」といって、青い梅の実が熟して黄色くなってくる頃と表現されています。
梅仕事で梅干しだけでなく、梅酒や梅シロップ、甘露煮やジャムなどを作って楽しんでいる方も多いのではないでしょうか。
漢方では、未成熟な青い梅を燻製にして黒くなったものを烏梅(うばい)といい、生薬として用いられます。
梅の酸味は、身体から何かが漏れていくのを防ぐ働きがあります。
長引く弱い咳や慢性的な下痢、出血などを止めてくれます。
虫下しの薬としても有名で、そこから食べ物での中毒や夏の胃腸障害などにも応用されます。
また、梅干を口に含むと唾液があふれてくるように、酸味には潤いを生む働きもあります。
夏の暑い日は、外に出れば汗をかき、咽が渇きます。
汗の漏れを調整し渇きを癒す梅は、夏の必需品ともいえるでしょう。
梅を使った身近な薬膳
中国では、烏梅を用いた酸梅湯(さんめいたん)という甘酸っぱいドリンクが有名です。
烏梅とサンザシ、洛神花(らくしんか:ハイビスカス)、陳皮(ちんぴ:みかんの皮を干したもの)、甘草(かんぞう)などをお湯で煮出して作ります。
中華街などでも見かけますので、暑さしのぎに覚えておくとよいでしょう。
烏梅の代わりに梅干、甘草の代わりに黒糖を用いてもおいしく出来上がります。
日本では、番茶に梅干しと生姜の絞り汁、醤油を加えた梅醤番茶(うめしょうばんちゃ)が知られています。
冷たいものの摂りすぎによる胃腸の不調や、冷房にあたって起こる夏かぜの予防などにも有効です。
手軽な調味料としておすすめなのが、第4回で紹介した紅花醤油と梅干を合わせたものです。
(季節を感じて気軽に薬膳 vol.4)
漬けてある生姜とニンニクはみじん切りにし、ほぐした梅干と合わせて醤油に加えます。
例えば、豚肉とニラ、もやしを炒める時の味付けにすると、さっぱりとした仕上がりになります。
また、そうめんのつゆを自分で作る際は、小梅とみょうがを刻んで加えると、食欲が落ちていてもスルスルと食べられます。
さまざまにアレンジして、夏の疲れを吹き飛ばしましょう。
【薬膳食材メモ】
梅:咽の渇きを潤し、疲労回復や食欲増進によい
洛神花:暑さを解消し、元気を補う
みょうが:お腹を温めて、冷えや夏かぜの改善に
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