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公開日:2020.12.20 更新日:2020.12.206370view

病は気から…「気のせいだよ」は本当だった!?

黄帝と一緒に『素問』を学ぶvol.22

原因不明で「気のせい」と言われたら…
新型コロナウイルスによる症状のひとつに、味覚の異常があります。
普段と食べ物の味が違って感じる、味がわからないなど、気を付けていないと見過ごしがちな症状です。
「気のせいかな?」と思って見過ごすと、とんでもないことになったかもしれません。

現代医学の診療では、本人の自覚症状とともに、さまざまな検査を行って原因を特定していきます。
科学が進歩したことによって受けるひとつの恩恵ですね。

すべての病において、原因が目に見える形ではっきりわかるとよいのですが、時には原因が特定できないこともあります。また、何となく不調なのだけど、周りの人から「気のせいだよ」と言われてしまうこともあります。

そんな時、漢方を思い出してください。
自然界には目に見えないエネルギー「 (き)」が存在していると漢方では考えます。
私たちの体内でも、「気」すなわち生命エネルギー が巡ることで活動ができます。

漢方では病気の原因を、目に見えるもの、見えないもの、共に「邪気 (じゃき)」と呼んでいます。
先ほどの「気のせいだよ」は、まさに「気」 のせいなのです!

気によるさまざまなトラブル
『黄帝内経:素問』の『挙痛論篇第三十九』では、さまざまな気のトラブルを紹介しています。
■寒いと気が縮みこむ
■熱いと気が発散する

寒いと毛穴が閉じて、気は外に発散できず縮みこみます。手足も縮こまって動きが鈍り、血行も悪くなって頭痛や腰痛など痛みが生じます。気分も盛り上がらず、鬱々してしまいます。
逆に熱いと毛穴は開いて汗をかき、気が発散して抜けていきます。大汗をかいた後に疲れてだるくなるのは、このためです。

■過労や心労で気は消耗する

気はエネルギーであり、過剰な活動によって消耗します。「気をつかう」といいますが、考え事や心配などが多すぎても気を消耗します。

■怒りすぎると気がのぼる
■喜びすぎると気がゆるむ
■悲しみすぎると気が消える
■恐れすぎると気が下がる

感情の行き過ぎが不調を起こすこともあります。

「逆上する」「頭に血がのぼる」などの表現があるように、怒りすぎると気がのぼるので、目は吊り上がり、声は高ぶって、ひどいと頭痛がします。
喜ぶと気がゆるむので、目じりが下がって口元もゆるみ、ふわふわとよい気分になり、ひどいとろれつが回らなくなります。
悲しいとため息が出て、言葉が少なくなるように、気は消えようとして呼吸が浅くなります。
怖い思いをすると体は縮こまり、気が下がるので、腰が抜けて立ち上がれなかったり、ひどいと失禁を起こします。

深い呼吸と瞑想で心身ともに強化しよう
気を充実させるために必要なことのひとつに、深い呼吸があげられます。
呼吸は、大気に満ち溢れるエネルギーをとりこみ、体内の上から下、下から上へ気を巡らせます。
深い呼吸は、気分を落ち着かせるのにも有効です。
息という漢字は、「自らの心」と書きます。心の状態が息遣いに反映されるといえるでしょう。

コロナ禍で外出も会話も制限されている窮屈な今こそ、深い呼吸で瞑想し心身ともに強化しましょう。
まずは朝一番、起きた時の深い呼吸を忘れずに!



齋藤 友香理
齋藤 友香理 - Yukari Saito[薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師]

1969年北海道生まれ。東京理科大学薬学部卒業後、薬日本堂入社。10年以上臨床を経験し、平成20年4月までニホンドウ漢方ブティック青山で店長を務めていた。多くの女性と悩みを共有した実績を持つ。講師となった現在、薬日本堂漢方スクールで教壇に立つかたわら社員教育にも携わり、「養生を指導できる人材」の育成に励んでいる。分かりやすい解説と気さくな人柄で、幅広い年齢層から支持されている。

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