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公開日:2020.05.20 更新日:2020.07.093083view

2000年以上前に夢診断?!さまざまな診察方法

黄帝と一緒に『素問』を学ぶvol.15

症状は体が示すサイン
新型コロナウイルスの影響が個人の体調、社会活動、経済活動などさまざまな分野に影響を及ぼしています。特に個人の体調では、ウイルス感染による肺炎の症状が出ていなくても、これまでの生活リズムとの変化、運動不足などから心身になんとなく不調を抱えるケースが増えているようです。こんな時こそ、未病(みびょう)を癒す漢方の智慧を活かしたいですね。

『素問(そもん)』の「脈要精微論篇第十七」の冒頭は、黄帝が脈の診方を岐伯に問う場面からスタートします。気血の通り道でもある経絡の状態があらわれるのが脈です。脈を診ることで、全身の状態を診断した古代の人々の発想力はすばらしいと思います。
脈診は一朝一夕に習得できる技術ではありません。けれど、体内の事情が人体のさまざまな部位や行動にあらわれると知っていれば、そこから診断することが可能です。

体に不調があるとあらわれるさまざまな症状。「症」という漢字は、「疒」ヤマイダレに「正」タダシイと書きます。症状は体が示す正しいサインなので、内なる声としてありがたく受け止めて対処することが大切なのです。


体にあらわれる五臓の不調
人体は気血水(きけつすい)で構成され、五臓六腑の機能で生命活動を維持しています。(参照:五臓、気血水

人体をひとつの宇宙ととらえ、すべてがつながっていると考えてみてください。五臓に不調があると、さまざまな症状が関連部位にあらわれます。

声に力がなく朝から晩までブツブツと同じことを繰り返す人は、肝の気が抜けている状態、家族と他人の区別もつかずにわめき散らす人は、心の気が乱れている状態だといいます。
 飲食後にすぐ吐いたり下したりする人は脾の機能は乱れており、ちょっとした拍子に尿をもらしてしまう人は腎の気が不足しているととらえます。
 
 頭は五臓すべての精気(エネルギー)が集まっているところなので、五臓のどこが弱っても意識が定まらず、ボーっとしてしまいます。
 また腰は腎を納めている場所で、骨とつながっています。ここに五臓のエネルギーが届けられないと、腎が弱って腰が曲がり、動きが鈍ります。骨にも影響して長時間立っていることが難しくなり、歩行も困難になります。まさに腎の生命維持機能が弱って老化現象があらわれると考えられます。
 
 五臓六腑、すべてに気血が充実して、本来の機能を発揮できることが健康そのものなのです。

体の不調が夢にあらわれる!
漢方では心と体はつながっていると考えます。そこで夢の内容によって、体調を診断することも可能だというのです。岐伯が紹介している一例をみてみましょう。

 まずは陰と陽のバランスの乱れから。
温める陽の気が盛んだと火が燃えている夢、冷やす陰の気が盛んだと川の流れを歩いて途方に暮れている夢をみます。
 上半身の気が盛んすぎると飛ぶ夢、下半身の気が盛んすぎると落ちる夢をみます。

 五臓の関連では次のようなものも。
 肝の気が盛んだと夢で怒って怒鳴り散らし、肺の気が盛んだと大声で泣く夢をみます。実際に私も、思うように仕事がはかどらなくてイライラとストレスをためていた夜、怒っている夢をみて自分の怒鳴り声で目が覚めた経験があります。

心と体が発する声に耳を傾けて、早めに対処することで未病を防ぎましょう。

齋藤 友香理
齋藤 友香理 - Yukari Saito[薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師]

1969年北海道生まれ。東京理科大学薬学部卒業後、薬日本堂入社。10年以上臨床を経験し、平成20年4月までニホンドウ漢方ブティック青山で店長を務めていた。多くの女性と悩みを共有した実績を持つ。講師となった現在、薬日本堂漢方スクールで教壇に立つかたわら社員教育にも携わり、「養生を指導できる人材」の育成に励んでいる。分かりやすい解説と気さくな人柄で、幅広い年齢層から支持されている。

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