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公開日:2020.02.20 更新日:2020.05.013008view

地域によって症状と治療法が異なるって本当?

黄帝と一緒に『素問』を学ぶvol.12

新型コロナウイルスにも衛気を発動

世界的に広がりをみせている新型コロナウイルス感染による肺炎。情報は氾濫していますが、まだまだ多くのことがわかっていないのが現状です。
このような時こそ、黄帝と岐伯の問答を思い出してみてください。第4回で「人体の外にあって、太陽のようにあなたを守る陽気のバリア、これを衛気(えき)という」と紹介しました。衛気は体外から襲ってくるものたちに抵抗する力でもあります。

衛気を十分に働かせるためには、睡眠不足や過労、心労、冷えなどで消耗させないことが大切です。夜はしっかりお風呂で温まり、睡眠時間をしっかりとりましょう。深い呼吸と適度な湿度によって、鼻やのど、呼吸に関わる肺をいたわることも大切です。まずは自分が出来ることから実践したいものです。

病の出方は地域・環境によって異なる!

ある時、黄帝は、同じ病気にみえても人によって治療方法が異なることに気づきました。それを岐伯に尋ねてみると、「地域によって出やすい症状、それに適した治療方法が異なるからです」という答えが返ってきました。これはどういうことでしょう?

まずはご自身の住んでいる地域や職場の環境を思い描いてみてください。例えば、スーパーマーケットで6時間働いている女性が3人いるとしましょう。レジ担当のAさんは出入り口に近いレジで作業をしているので、風に当たりやすく、足元が冷えます。総菜を作るために厨房で作業をしているBさんは、火を使うためいつもあつい思いをしています。精鮮魚売り場のCさんは、冷蔵庫の近くで作業をするのでいつも寒い思いをしています。
Aさん、Bさん、Cさんでは環境が異なるので、不調があらわれる時もまったく同じにはならないだろうことが想像できます。

症状ごとの有効な治療法は異なる

岐伯は東・西・南・北・中央、各地域の特徴とそこに暮らす人々の食事内容から、起こりやすい不調と適切な治療法について解説しています。一緒にみていきましょう。
東の地域は海に近く、人々は魚を食べ塩味を好みます。塩分が多いと血液は粘りやすく、皮膚にできものが出やすくなります。この場合、砭石(へんせき)と呼ばれる石でできた道具による切開が必要です。

西の地域は白い砂漠が広がり、いつも乾燥した風にさらされています。水分が少なく植物は乏しいので、肉食で太っている人が多くなります。栄養は充実していますが、内臓に負担をかけるので、生薬を煮出した煎じ薬を服用して体内を浄化する治療法が発展しました。

南の地域は太陽が降り注ぎ、湿気を含んだやわらかい土地が広がります。ここでは酸味のある果物を多く食べますが、これによってしびれや痙攣などの症状が出やすくなります。そこで鍼治療が発展しました。

北の地域は高原地帯で、冷たい風が強く吹きます。人々は遊牧生活を営み、乳製品を常食するため内臓の冷えによる症状が出やすくなります。そこでヨモギを使って温める灸などの治療法が発展しました。

中央の地域は肥沃な大地に恵まれ、重労働をしなくても様々なものが得られます。運動不足が続くと手足の動きが鈍り、慢性化した発熱症状があらわれます。そこで按摩などマッサージによる治療が発展しました。

このように、環境と食事、不調と治療法など、さまざまなものがつながっています。健康のために、ご自身のおかれた環境と食事から、まず意識してみませんか?

齋藤 友香理
齋藤 友香理 - Yukari Saito[薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師]

1969年北海道生まれ。東京理科大学薬学部卒業後、薬日本堂入社。10年以上臨床を経験し、平成20年4月までニホンドウ漢方ブティック青山で店長を務めていた。多くの女性と悩みを共有した実績を持つ。講師となった現在、薬日本堂漢方スクールで教壇に立つかたわら社員教育にも携わり、「養生を指導できる人材」の育成に励んでいる。分かりやすい解説と気さくな人柄で、幅広い年齢層から支持されている。

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