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公開日:2019.12.20 更新日:2020.05.156016view

五行配当の妙~顔色と脈からわかる五臓の不調

黄帝と一緒に『素問』を学ぶvol.10

5つの味が体調を決める!?

『素問』では五行配当の表現が何度も出てきます。「五臓生成篇第十」でも「第九」に引き続き、五行のつながりを解説しています。この考え方がわかると、自分の体調管理はもとより、マンウォッチングが楽しくなります。もしかしたら黄帝も、岐伯から学んだ五行配当の妙を活かして国を動かしていたのかもしれません。

検査機器のない古代、人々は内臓の不調を体表の部位を観察することで見出してきました。
これは五行配当の賜物です。というよりも、古代の人々の観察の結果が五行配当として表現されているのです。
薬膳の五味も合わせてみると、大変おもしろいことがわかります。五行配当の縦のつながりと、五行の相克(参考:黄帝と一緒に『素問』を学ぶvol.9)を思い浮かべながら読んでください。

五臓の心(しん)の状態は血脈、いわゆる心臓の拍動と血流と顔色にあらわれます。心は苦味の飲食物で営養されます。逆に鹹味(かんみ=塩味のこと)を摂り過ぎると、血がドロドロになって流れが悪くなり顔色も悪くなります。

五臓の肺(はい)の状態は皮膚や体毛にあらわれます。これは辛味の食材で営養されます。苦味を過食すると肌はガサガサになって体毛も抜けるので、身体を守る力も弱まります。

五臓の肝(かん)の状態は運動を担う筋や爪にあらわれ、酸味によって営養されます。特に薬膳では「酸甘化陰(さんかんかいん)」といって、酸味と甘味をあわせると潤いになると考えますから、スポーツの後に甘酸っぱい飲み物が欲しくなるのもうなずけます。逆に辛味を摂り過ぎると、筋がひきつり、爪も割れやすくなります。

五臓の脾(ひ)の状態は肉体と唇にあらわれます。脾は飲食物の消化吸収を担っているので、飲食の不摂生が痩せや肥満の原因となると考えます。脾は自然な甘味によって営養されますが、過剰な酸味は肉体を縮ませて唇もめくれあがってきます。

五臓の腎(じん)の状態は骨と髪にあらわれます。腎は人の誕生から老いて死ぬまでの生命力を貯蔵すると考えます。老化による骨粗鬆症や白髪・抜け毛を思うとわかりやすいでしょう。腎は鹹味によって営養されますが、甘味を摂り過ぎると骨が痛んで髪も抜け落ちるとされています。

こうやってみていくと、気になっている体調不良が、日々食している味の偏りが原因になることもわかってきます。

食材が血脈を滋養して動ける

「食が血となり肉となる」といいますが、薬膳でも五味や五色の食材が血脈と五臓を滋養すると考えます。

漢方ではおもしろい考え方があります。夜、人が寝ている間は血が五臓の肝に戻り、日中、目に送られた血で視ることができるといいます。手指に送られた血で握ったりつかむことができ、足に送られた血で歩くことが出来る。人体のすべての部位が血の栄養を受けて働くことが出来るのです。寝ている間の冷えや睡眠不足が続くと活動が鈍るのはこのためです。

顔色と脈で五臓の不調がばれてしまう…

血が全身に充実してスムーズに流れていると、顔色もよく、脈もしっかりと触れます。漢方では顔色などを診ることを「望診」、脈を診ることを「脈診」といいます。脈診では、手首の親指つけ根側から指で押さえて脈を診ます。

顔面に病的な赤色があらわれている時には、五臓の心に関わるので押さえると力強く堅い脈があらわれます。病的な白色の時には肺の脈で、押さえると力が弱く診れなくなります。
顔色に病的な青色があらわれている時は、弾き返すように張っている肝の脈があらわれ、みぞおちや脇腹がつかえたような不快感がみられます。
顔色に病的な黄色があらわれている時には脾の脈、病的な黒色の場合は腎の脈という具合です。
 
脈診をマスターするのは難しいですが、顔色から体調を考察することは誰でも始められることです。まずはご自身の身体が発しているさまざまなサインに目を向ける。ここから体調管理を始めてみませんか?

齋藤 友香理
齋藤 友香理 - Yukari Saito[薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師]

1969年北海道生まれ。東京理科大学薬学部卒業後、薬日本堂入社。10年以上臨床を経験し、平成20年4月までニホンドウ漢方ブティック青山で店長を務めていた。多くの女性と悩みを共有した実績を持つ。講師となった現在、薬日本堂漢方スクールで教壇に立つかたわら社員教育にも携わり、「養生を指導できる人材」の育成に励んでいる。分かりやすい解説と気さくな人柄で、幅広い年齢層から支持されている。

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