- 山本 浩士 - Hiroshi Yamamoto
鍼灸師(厚生労働大臣免許・国家資格) 兵庫県西宮市出身。
幼少より武術修行を始め、師より医武同源の考えを教わり、武術と医術の両立を志す。
高校卒業後、大阪のアクションチームに所属し、映像や舞台などで仕事をする。
2009年、はり師・きゅう師の国家資格を取得し、地元兵庫県西宮市で「はり灸楊鍼堂」を開院。千葉の恩師から、参禅や滝行の修行を通して伝統医術を学ぶ。また、数名の先生から江戸時代の鍼術や道家気功鍼などを学び、難病や慢性疾患に対する臨床経験を多く積む。2015年に東京へ移転。2016年から、ポーランドやイタリアで鍼灸、気功、武術、導引按腹の出張講義を開始。2017年11月から、自由が丘で「漢方鍼灸 和氣香風」を妻とともに開業。
身近で遠い鍼の世界~歴史上でもマイナー扱い?!
鍼灸雑話その13
今も昔もマイナーな鍼治療
昨年末頃から鍼灸(特に鍼=はり)に関する特集をテレビで見かけるようになりました。
今まで、漢方薬の特集は多かったのですが、鍼がメインに出てくるのは珍しいと思います。
鍼灸は日本の伝統医学のひとつですが、まだまだ鍼灸を受ける人は少ないのが現実で、医療を受ける方全体の数パーセント(5%未満)と言われます。
その理由は様々ですが、やはり「よく知らないから怖い」という声が多いのではないでしょうか。
実は、歴史的に見ても「鍼」はマイナー街道を突き進んできました。
戦乱の時代では、金創医(きんそうい=外科医)と薬が重視されるため鍼灸は廃れていました。
江戸時代になると宮中や将軍家の治療をする鍼医もいましたが、江戸時代後期の医学書には「漢方薬はポピュラーだけど、鍼灸はマイナーだから大変で・・・(意訳)」というような記述も見られます。
今日はせっかくなので、道具としての鍼、「九鍼(きゅうしん)」について紹介してみます。
九針と適応疾患
鍼は「砭石(へんせき)」と呼ばれる、石を研いで作った石鍼を起源とし、主に皮膚を切開し膿を取り出すために使われたと言います。そこから、魚の骨、竹、陶器、鉄・・・と時代に応じて変化、発展をしてきました。
「黄帝内経(こうていだいけい)」の中の「九針十二原篇」では、九つの鍼の意味と機能、治療法などについて説かれています。
今回は、本郷正豊によって書かれた「鍼灸重宝記(1718年刊)」の中から、九針の部分を意訳してみます。
1 鑱鍼(ざんしん):長さ一寸六分
熱が頭や身体にある時に使い、陽気(熱)を外に出すために用いる。
2 圓鍼(えんしん):長さ一寸六分
筋肉やスジの隙間にたまった気を、撫でさすり流していくために用いる。皮膚や筋肉を傷つけないようにする。
3 堤(鍉)鍼(ていしん):長さ三寸五分
脈を軽くおさえ、気を捕まえ、邪気を外に出すために用いる。
4 鋒鍼(ほうしん):長さ一寸六分
痛みや吹き出物などで熱がある時に刺し、溜まった熱と血を出すのに用いる。
5 鈹鍼(ひしん):長さ四寸、幅二分半
腫瘍や感染性の皮膚炎に刺し、膿を出すために用いる。
6 圓利鍼(えんりしん):長さ一寸六分
皮膚のでき物、痺れ、強い痛みなどを取るために用いる。
7 毫鍼(ごうしん):長さ一寸六分
冷えや熱、痛み、痺れ、経絡の問題を取るために用いる。
8 長鍼(ちょうしん):長さ七寸
慢性化した深い病、痛み、痺れなどを取るために用いる。
9 大鍼(だいしん):長さ四寸
関節に水がたまり、腫れた場合などに用いる。
現代の日本では、法律の関係で鍼灸師が扱えない鍼もありますが、現代のいわゆる「鍼」は「毫鍼」をベースに作られており、多くの症状に対応してきたのがわかります。
鍼灸院へ行こう!
「保険が効かない」「痛そう・鍼が怖い」「科学的根拠がない」
時々、鍼灸に対してこういう意見を聞きます。
まず、「適応疾患の制限」や「医師の同意書が必要」といった制約はありますが、鍼灸でも公的保険は使えます。
ただ、自費の院が多いのは否めませんので、まずは確認してください。
鍼を打つ(刺す)ので、痛くないとは断言できません。
しかし、刺さない鍼などが扱える鍼灸師も多くいますので、相談されると良いかと思います。
現代科学による研究も世界各地でおこなわれ、「鍼をすればどんな効果があるのか?」という研究データが一般向けにテレビや書物でも公開されるようになってきました。
現代科学が古典医学に追いついてきた、そう思えることも多いです。
私自身、薬日本堂漢方スクールでお灸レッスンもしていますので、まず試しに参加し、気になることを質問して頂いても構いません。
痛みのある方はその緩和に、特に怪我や疾患のない方は予防に、ぜひお近くの鍼灸院へ行ってみてください!!
さて、取り留めもなく書いてきた鍼灸雑話ですが、残すところあと一回です。
最後は何を書こうか・・・ではまた来月!
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