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公開日:2018.08.05 更新日:2020.05.194405view

春夏こそ陽気を養い、気血を巡らせ身体を強くしよう

鍼灸雑話 その7

夏は陽気を養おう!

今年の夏は全国的に猛暑です。祇園祭の花傘巡行が中止になるほど!

暑い日々ですが、
「春夏には陽気を養え」
というのが、古来の教えです。

陽気は、身体を温めるとともに、防御機能を担っています。陽気によって細菌やウイルスにも負けない身体が維持されるのですが、不足するとこれらに負けます。

ただでさえ夏場は冷房、かき氷、生ビール・・・と、陽気を損なう(つまり冷やす)ものだらけ。
冷えは万病のもと。アイスコーヒーを飲む時は氷抜き、家では白湯や熱い茶を飲み、猛暑であっても「陽気」を養うように心がけましょう!

夏カゼの治療と予防にオススメ!

暑い夏に増えるのが「夏カゼ」の相談です。冷えて、気血の巡りが悪くなったのが原因です。
そんな時の応急処置を伝授します!

それは「大椎(だいつい)を温める」

まず下を向いてみましょう。
後頭部から背中に向かい、背骨上を指で滑らせていくと、大きな骨が出っ張っているのがわかると思います。
これが「大椎(第7頸椎)」です。
ここを熱めのシャワー、あるいはドライヤーでしっかり暖めて下さい。(もちろんお灸でも!)

去風散寒(きょふうさんかん)
理気降逆(りきこうぎゃく)
粛肺調気(しゅくはいちょうき)
鎮静安神(ちんせいあんじん)

これらの働きを持ち、冷えた身体には熱を与え、熱を持った身体には解熱をうながす効果があります。
早め早めに行えば、予防になります。

陰陽論では「陽極まれば陰に変化する」と考えます。
つまり、発熱した時は(特に寒気のある時)、あえて熱を加えることで陰陽は転化し、自然と解熱されます。
熱を以て熱を制するわけです。熱中症も、ひどくなると寒気を訴えます。この時、下手に冷すと悪化してしまいます。
例えば、捻挫をして腫れた時も同じで、アイシングよりも暖めて血行促進させる方が意外と治りの速いことは、アスリートにも知られています。

ここで体験談をひとつ。

京都太秦に映画村があります。20年ほど前のとある正月、私はそこで「ヒーローショー」の仕事をしていました。楽屋で準備をしていると、ゾクゾクと背筋に寒気を感じ、頭が熱でボーッとし、寒気と倦怠感が悪化してきました。

ちょうど、鍼灸師でもある先輩がいて「腰をストーブで温めながら、ドライヤーで首の付け根を徹底的に温めろ!」と言われ、その通りにしました。
30分は続けたでしょうか(しかもヒーローの衣装を着たまま!)・・・続けると身体の怠さが楽になってきました。
さらに続けると、汗が出て、寒気も消え、身体の中からポカポカしてきました。
おかげで、その日のショーとサイン会を無事に乗り切ることが出来ました。

ただ、帰りの電車の中で気を失いそうになりましたが・・・(これは無理に仕事をした結果)

夏こそ頭寒足熱(ずかんそくねつ)!

「心静自然涼」
夏の養生訓です。言い換えれば「心頭滅却すれば火もまた涼し」です。
「嫌い!」と思うほど憎たらしく、「暑い!」と思うほどに暑いもんです。

そんな時は風通しの良い木陰に座り、背筋を調え、軽く目を閉じ、掌は太ももの上に置き、静かに自分の呼吸を観察してください。
そうして、スーッと心の火が鎮まり、全ての疲れ、ストレスが足裏から抜けていくと思ってください(まずは5分ほど続ける)。
心静自然涼です。白湯を一口飲むともっと良いでしょう。

さらにもう一つ!
それは「足湯」です。
差し湯をしながら20分は続けましょう。

「上虚下実(上半身の力みを取り、下半身の力を充実させる)」「頭寒足熱(頭部は冷やして、足は温める)」は、一年を通して守っておくべきポイントです。
夏は逆転しやすいので、足湯はいち押しの解消法です。
頭(脳)は冷して、内臓や下半身は温かくすることを目指しましょう。

夏は養生の難しい季節ですが、冬を迎える上でとても大事な季節です。
漢方ライフでは、多くの先生が夏の薬膳や養生について書かれていますので、それと併せて実践して頂ければ嬉しいです。
夏こそ陽気を養いましょう!

山本 浩士
山本 浩士 - Hiroshi Yamamoto

鍼灸師(厚生労働大臣免許・国家資格) 兵庫県西宮市出身。

幼少より武術修行を始め、師より医武同源の考えを教わり、武術と医術の両立を志す。

高校卒業後、大阪のアクションチームに所属し、映像や舞台などで仕事をする。

2009年、はり師・きゅう師の国家資格を取得し、地元兵庫県西宮市で「はり灸楊鍼堂」を開院。千葉の恩師から、参禅や滝行の修行を通して伝統医術を学ぶ。また、数名の先生から江戸時代の鍼術や道家気功鍼などを学び、難病や慢性疾患に対する臨床経験を多く積む。2015年に東京へ移転。2016年から、ポーランドやイタリアで鍼灸、気功、武術、導引按腹の出張講義を開始。2017年11月から、自由が丘で「漢方鍼灸 和氣香風」を妻とともに開業。

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