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公開日:2018.01.20 更新日:2020.05.1913162view

陰陽平衡 ~ 冬は日がさしてから起きる

気の省エネ生活 vol.7

気は養うだけでなく、消耗を避けるということも大切です。このコラムでは「気の省エネ生活」をお伝えしていますが、これは活動を控えて消極的に生活するということではなく、“限りある元気”を自分が本当に注ぎたいことに有効に使っていくという積極的な生活のための養生提案です。知らず知らずに“元気“を損なうことがないよう、忘れがちな当たり前のことを改めて気に留めて生活していきたいと思います。

前3回(vol.4vol.5vol.6)は飲食の話題でしたが、健康を目指し維持するために飲食に劣らず大切なのが睡眠です。通常、人は食べなければ生きられませんが、眠らなくても生きられません。今回は睡眠についての話です。

古代中国の人びとは、物事には2つの相反する性質があってそのバランスの上に全体としての秩序が保たれていることに気づきました。陰陽学説の始まりです。陰陽の法則は人体の成長発育や生理的なバランスの維持、そして養生においても基本となります。
春夏は陽の季節、秋冬は陰の季節であり、朝昼は陽の時間、夕夜は陰の時間です。この陰陽リズムに順応することが養生の原則であり、気を養い不要に消耗しないことにつながります。

天人相応(てんじんそうおう) ~ 陰の時間には陰の行動を

人は自然と密接な関係があり、体内の陰陽は常に自然界の影響を受けて変化しています(天人相応)。自然の陰陽リズムに順応した生活とは、陰の時間には陰の行動、陽の時間には陽の行動をとるということです。
一日の時間帯において最も陰が深まるのは午前零時頃ですので、そのあたりの時間帯には横になって眠っていることが大切です。“当たり前のこと”は“自然なこと”と言い換えることができると思います。
貝原益軒の『養生訓』では、夜ふかしの害について次のように述べられています。

夜に読書したり、ひとと語り合ったりするのは三更(十二時)を限度としなければならない。一夜を五更に分けると、三更は四つ半すぎから九つのあいだ(午後十一時~午前零時)である。深夜まで起きていると神経が高揚してしずまらないからである。
(貝原益軒 『養生訓』 全現代語訳 訳:伊藤友信 講談社学術文庫)


起きて活動しているとき気血は身体を巡り活動の原動力となりますが、夜横になって眠ると気は省エネモードとなり、血は肝へ戻って蓄えられ心身が休息します。
夕方を過ぎたら陰の深まりに合わせて意識的に陰の行動をとり、できるだけ日付が変わる前に就寝するように心がけましょう。

四季との調和 ~ 冬は早寝遅起き

皆さんの起床時刻は夏と冬で同じですか?目覚ましを使わなかった場合はいかがでしょうか。
自然に目が覚める時刻は季節によって変化すると思います。私の場合、夏と冬では1時間~1時間半ほど差があります。冬になると怠けてしまうわけではなく自然なことだと分かったのは漢方を学んでからです。

自然界の陰と陽は常に変化しながらバランスをとっています(陰陽平衡)。一日の陰陽リズムは季節によって変わりますので、人が健康を保つ(=体内の陰陽を平衡に保つ)には自然の陰陽変化と適応することが大切ですね。

中国の漢の時代に成立し中国医学の基礎理論と養生法がまとめられている『黄帝内経:素問』に、「陰陽と調和し、四季と調和する」と養生の原則が表現されています。その『黄帝内経:素問』の中で季節における生活態度に触れて次のように寝起きするよう記述されています。

春と夏は、 「・・・夜ふかしすることなく早く床に入り、朝は早く起床し・・・」
秋は 「・・・早く寝て早く起きる・・・」
冬は 「・・・夜は早く寝て、朝は遅くまで床にあって日が昇ってから起き・・・」

四季を通じて夜更かしは避け、とくに陰の季節である秋冬は早めに寝るように心がけます。起床については春夏秋は早起きを。しかし冬は「必ず日光を待ってから起きるように」と、遅起きを推奨しています。

陰の季節である冬は陽気を保ち損なわないことが養生のポイントとなります。そのために自然な休息である睡眠は冬にとくに重要です。早く寝て、朝は日がさしてから起きることで冬の心身の消耗を減らし精気を蓄え、陽の季節である春の活動に備えることができるのです。

家庭のことや仕事の関係上、季節に関係なく同じ時刻に起床せざるを得ないことが多いと思います。現代の社会生活においては古代のように太陽の動きで生活時間を刻むというわけにはいきませんが、出来る範囲で季節の時間に沿って生活していきたいですね。

飯田 勝恵
飯田 勝恵 - Katsue Iida[薬剤師・薬日本堂漢方スクール講師]

静岡県立大学薬学部卒業。1998年薬日本堂入社。約10年間の臨床と店長を経験。店舗運営や相談員教育などに携わり、その後「自然・人・社会に役立つ漢方の考えをより多くの人に伝えたい」と講師として活動。薬だけではない漢方の思想や理論に惹かれ、気功や太極拳、瞑想なども生活に取り入れながら漢方・養生を実践している。

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