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公開日:2017.09.01 更新日:2020.05.206328view

杏仁豆腐の引き立て役?クコは目にも耳にも良い!

生薬の花めぐり(5)

日々の暮らしの中で食べている食材の中に、実は生薬になるものがあります。このコラムでは、生薬になる植物とその花を紹介します。より生薬を身近に感じていただき、皆さんが簡単なところから漢方の実践ができるように、と願っています。今回はクコの話です。どうぞお付き合いのほど、よろしくお願いします。
クコの実といえば、杏仁豆腐の上に載っているイメージですね。最近では、ゴジベリーという名前で、スーパーのドライフルーツコーナーや、チョコレートをかけたお菓子として見かけるようになりました。

ところで、クコの花は見たことがありますか?クコはナス科の多年生植物です。
そのため、ナスの花と色が似ています。小さくて,可愛らしい花でしょう?東京のあたりでは7月に花が咲きはじめ9月末まで見られます。花を摘んで洗い、お茶にしたり煮物や炒め物にすることができます。血の貯蔵と調整を主る肝と、生殖や泌尿を主る腎を強くするので虚弱体質や健康維持、老化防止に良いとされています。

2017年8月13日撮影(東京都薬用植物園)

クコの実は甘味があり、若干の苦味もあります。約2000年前の生薬の書物、『神農本草経』では「上品(じょうほん)」に区分され、安全で薬用と食用の両方を兼ね備えると書かれています。
乾燥したものを使い、一日10~20gが目安です。滋養強壮のはたらきで老化防止に、また眼精疲労、視力低下、耳鳴り、難聴など目と耳の不調に良いとされています。
お粥や鍋料理、炒めものなど、気軽に使えます。菊花と合わせるとなお良いですね。クコはビタミンB、ビタミンC、ミネラルなども豊富で、美容食品としても知られています。

クコの性味は「平」と書かれていますが、少し温めるのでイライラしやすいとき、ほてりや炎症のあるときは控えめにするか、清涼薬(食)を適宜加えるとよいでしょう。
また、少し消化しにくいので胃腸虚弱、下痢のときも控えめにしてください。食べ過ぎると鼻血が出ることもありますので注意しましょう。
クコが配合されている処方に杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)があります。

クコの葉は枸杞葉(くこよう)と呼ばれ、中国の南方では葉の新芽を野菜として炒めものや煮物に、乾燥したものはお茶として使っています。冷やす性質をもち、ほてりや目のかすみに良いとされています。

根皮は地骨皮(じこっぴ)と呼ばれ、清熱涼血薬に分類されます。
火照りや発熱を伴う症状や病気に良いということで、月経前のほてり、更年期のホットフラッシュ、高血圧、糖尿病、出血などに使われています。
日本で地骨皮が配合されている処方には滋陰至宝湯清心蓮子飲があります。

明代、李時珍の『本草綱目』によれば、春に葉、夏に花、秋に実、冬に根を採り、四つ合わせて作った丸剤を服用すると、年をとっても歯が丈夫で、髪の毛が黒々と、健脚でいられるとのこと、積極的に摂りたいですね。

葉と花、実と根も全部食べられ、はたらきもそれぞれ。捨てるところがない、クコの魅力が伝わったでしょうか。

次回は「シソ」の話題をお届けします。お楽しみに!

リュウ・メイ
劉 梅 – Mei Ryu[中医師]

中国黒龍江省生まれ、黒龍江中医薬大学卒業後、ハルビン医科大学付属二院に内科医として臨床を経験。1994年に来日、北海道大学医学部客員研究員を経て、2001年、薬日本堂に入社。主な著書『中国の女医さんが教えるおいしくて身体にいい中華』『病気・症状を改善 これならできる漢方ごはん』。

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