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公開日:2025.02.07 732view

節分に隠れていた陰陽五行

暮らしに潜む!漢方よもやま話 最終回

節分は、新しい年への大きな節目
立春を迎え、いよいよ春の到来です。
旧暦ではこの立春が1年のスタート。ここからが新しい年の始まりです。

今年も、立春前の節分では「鬼は外」「福は内」と声をかけながら、各地で豆まきが行われました。
実はこの節分、当初は年に4回訪れる「立春・立夏・立秋・立冬」の前日を指し、季節の節目をあらわす言葉でしたが、今ではその中で新しい年を迎える節目となる立春の前日が最も重要視されるようになりました。

一年の締めくくりである節分には、悪いものを追い出し、縁起のよいものを取り入れ、新しい年を迎えたいという人々の願いが込められています。

そもそも「鬼」って何ですか?
豆まきに登場する「鬼」って何者なのでしょう?
鬼の由来には諸説あります。
一説では、鬼は隠れて目に見えない存在として「隠(オヌ)」や「陰(オン)」などと呼ばれ、この「オヌ」や「オン」が「オニ」という言葉に変化し、さらに死者の魂を表す「鬼」という漢字があてられたと言われています。
このことから鬼は「陰」の象徴とされ、太古の時代から、人知を超えた災害や疫病などの災いは鬼の仕業によるものと考えられてきました。

立春の前日は、一年の中で最も寒さの厳しい大寒の時期です。
この時期の厳しい寒さ、蔓延するインフルエンザやカゼなども鬼にたとえることができそうです。
陰陽の世界では、この時期は、冬から春に向け自然界のエネルギーが「陰」から「陽」へと移り変わっていきます。
新しい春の陽気を迎えるためにも、陰の象徴である鬼にはぜひとも退散してもらいたいところですね。

太巻きに隠れていた“五行バランス”
節分に食べる恵方巻は、縁起が良い食べ物として知られていますが、この基となる太巻きの背景には五行の考えが息づいています。

五行では、自然界のものは「木・火・土・金・水」の5つの要素から成り立っていて、自然界ではそれぞれが深く関係しあいながらバランスがとれていると考えます。

そして、自然界のあらゆるものをこの5つに分けて関連づけました。
太巻きには、この五行に配分されている「青・赤・黄・白・黒」の五色がすべて入っています。

五色食材の薬膳応用

◆木―青(緑)
きゅうり : 身体の熱を冷まし咽の渇きを癒します。体内の水めぐりを調えるのでむくみにもよい食材です。

◆火―赤
紅しょうが : お腹を温め胃の調子を整えます。発汗して寒さを払うのでカゼの引きはじめにおすすめです。
桜でんぶ : 原料として使われる鯛や鱈は気血を補うので疲れやすくめまいが気になる時に使いたい食材です。

◆土―黄
卵 : 血を補って身体を潤すので、精神不安や不眠、乾燥による咳に役立ちます。

◆金―白
ごはん : 米は胃腸を丈夫にして消化力を高め、元気を補います。

◆水―黒
海苔 : 痰を切りはれものを小さくします。身体の熱を冷まし、尿を出します。
しいたけ : 食べると胃がもたれるなど、消化力が落ちているときにおすすめの食材です。

節分には、バランスよく五色の入った食べ物を頂いて心身のバランスを調えて春を迎えたいという想いが込められていました。

自然のリズムに寄り添った先人たちの暮らしには、人生を健やかに豊かに過ごそうとする養生の智慧に溢れています。
私たちが未来を元気に生き抜くための先人達からの贈り物かもしれません。

5回にわたってお送りした「暮らしに潜む!漢方よもやま話」は今回が最終回です。
ご覧いただき、ありがとうございました!

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節分 風邪
山吹 育恵
山吹 育恵 - Ikue Yamabuki[薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師]

東北医科薬科大学を卒業後、病院勤務を経て1990年薬日本堂入社。 2011年までニホンドウ漢方ブティック仙台トラストシティ店で店長を務めた後、20年の臨床経験を活かし、漢方スクールの講師と社内相談員の学術支援に携わる。大自然の力に魅せられ、自然農の考えに触れたことをきっかけに15年前より自らも農業を実践中。

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