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公開日:2024.10.18 更新日:2024.10.211473view

補中益気湯はどんなときに使う?

漢方薬のつぶやき vol.24

幅広い適用症状
疲れやすい、全身の倦怠感、病中・病後の体力回復などに使われる補中益気湯。

「補中益気」とは、気を補い動かして胃腸の働きを順調にするという意味があります。
「補中」の「中」はおもに胃腸の働きを指し、補中益気湯は胃腸虚弱に使われる代表的な漢方薬です。

しかし、補中益気湯の使用範囲は広く、胃腸トラブルにとどまらず様々な不調や病気に応用されています。
それは、胃腸の虚弱が多くの疾患を引き起こす原因になるからです。
そこで、補中益気湯をどんなときに使うことができるのか、3つの角度でお伝えします。

胃腸の不調や内臓下垂に
まずは、胃腸虚弱の不調です。
補中益気湯の出典は『脾胃論(ひいろん)』という書物。
脾胃(ひい)とは胃腸の働きのことです。飲食物を消化・吸収して栄養である気血をつくりだし、全身へ運び、不要なものは排泄するという一連の働きを担います。

脾胃のパワーが不足した状態を「脾胃気虚」といい、補中益気湯は胃腸機能が低下している様々な不調に使います。

具体的には、食欲不振、軟便で下痢しやすい、食後に全身または四肢の倦怠感を感じる、小食傾向で食べても太れないなど。さらに、胃下垂や子宮下垂、脱肛など、内臓の下垂も胃腸虚弱で起こります。

脾(ひ)は飲食物の消化吸収だけでなく、内臓の位置を本来あるべき場所に保つ働きもしてます。ですから脾が弱いと内臓を支えることができなくなり、内臓下垂を引き起こします。



気不足の疲労倦怠や汗かきに
前述したように、私たちは飲食したものから脾胃(胃腸の働き)によって気血をつくりだします。ですから、脾胃に不調があると全身の気血不足も招きます。

漢方薬をその効能によって整理すると、補中益気湯は気を補い元気を回復する「補気剤」に分類されます。

気の不足による具体的な症状は、疲労感が強い、顔色が白っぽい、肌にツヤがない、動くと息切れしやすい、呼吸が浅い、話しをしたり動くのがおっくうなど。
また、気不足から頭痛、めまい、眼精疲労、冷え、低血圧が起こることもあります。

ところで、「気」は元気の素であるだけでなく、汗の出すぎや尿の漏れを防いだり、血管から血が漏れないようにするなどの働きもあります。
ですから、多汗症、尿もれ、出血といった症状で気不足が原因の場合には補中益気湯を使うことがあります。

肺の不調と体質改善に
補中益気湯は、カゼをひきやすい人やアレルギー性鼻炎などの体質改善にも使われます。
これらは肺に関係する不調です。

なぜ肺の不調に補中益気湯が使われるのか?
人体においては、5つの臓が互いに助け合ったり、抑制し合いながら全体としてバランスを保っています。

漢方の基礎となる「五行説(ごぎょうせつ)」では、脾と肺は母と子のように助け合う関係性にあります。ですから、脾に不調があれば肺にも影響して肺の不調が生じます。
つまり、肺に関連する症状であっても、脾(胃腸)をたて直していくことで改善していくことができるわけです。

肺の不調による具体的な症状は、カゼをひきやすい、花粉症や鼻炎、皮膚が弱い、呼吸が浅い、息ぎれしやすい、声がかすれる、のどが弱い、汗をかきやすいなど。こういった症状の体質改善として補中益気湯が応用されます。


今回は3つの角度で補中益気湯の適用をお伝えしました。

補中益気湯がこれだけ広範囲に応用される理由のひとつは、「気を補い胃腸の働きを順調にする」漢方薬だからです。胃腸を労わり健やかさを保つことは、様々な不調や病気を予防することにつながります。

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飯田 勝恵
飯田 勝恵 - Katsue Iida[薬剤師・薬日本堂漢方スクール講師]

静岡県立大学薬学部卒業。1998年薬日本堂入社。約10年間の臨床と店長を経験。店舗運営や相談員教育などに携わり、その後「自然・人・社会に役立つ漢方の考えをより多くの人に伝えたい」と講師として活動。薬だけではない漢方の思想や理論に惹かれ、気功や太極拳、瞑想なども生活に取り入れながら漢方・養生を実践している。

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