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公開日:2024.10.07 更新日:2024.10.07295view

会話に息づく漢方ワールド

暮らしに潜む!漢方よもやま話 vol.3

「お元気ですか」に潜む漢方

「お元気ですか?」 私たちは、しばらく顔を合わせていない知人に対し、このようなご挨拶をします。
実はこの「元気」という言葉、漢方を学んでいくと遭遇する漢方用語として使われています。

一体、漢方では、この「元気」という言葉をどのように捉えているのでしょう?

“気”は大自然、宇宙に溢れるエネルギー

そもそも漢方では、この宇宙や自然に満ち溢れ生命・万物を生み出すエネルギーを「気」と表現しています。

「気」は私たちの生命を成り立たせている根源的なエネルギーで、私たちの生命活動はこの「気」によって営まれています。

「元気」は生命活動の原動力

私たちの生命活動を支えている「気」は、存在する場所やはたらきの違いによって様々な名前がつけられています。

・元気(げんき)…全身のいたるところに行きわたり、生命活動の原動力となる
・宗気(そうき)…胸の中に集まって、心拍運動や呼吸運動を推進する
・営気(えいき)…血脈の中に入り、血を作り全身を栄養する
・衛気(えき)…体表を覆うバリアーとして、外敵から身体を守る

このことから、漢方でいう「元気」は、私たちの生命を支える上で必要な最も基本的なエネルギーだということがわかります。

私たちが普段、何気なく使っている「お元気ですか?」という挨拶には、「あなたの生命活動の原動力は十分に満たされ、活かされていますか?」あるいは、「大自然のエネルギーと調和して今ここに存在していますか?」という深い想いが込められていたようです。

 



「精一杯、頑張ります!」の「精」って何?
「精一杯」を辞書で引くと「力のある限りを出す様子。可能なぎりぎりの様子」という意味が出てきます。

漢方では、この「精」という用語もよく使われますが、「精」にはどのような意味が隠されているのでしょうか?

漢方では、「精は生命活動を維持する根源的な物質」と言われています。
つまり「生命エネルギーを生み出す種」のようなものと捉えてもよいでしょう。

私たちが「精いっぱい頑張ります。」というとき、漢方視点で直訳すると「自身の生命活動を維持する根源的な物質をいっぱい使って頑張ります。」という意味になるのでしょうか?

一般に用いられる意味合いとほぼ違いはなさそうですが、漢方視点で捉えると、軽い気持ちでは使うことができなくなる、そんな言葉の重みを感じます。

カゼを風邪(ふうじゃ)と書くのはなぜ?
寒気やのどの痛み、鼻水、咳といった症状があらわれた時、私たちは「カゼをひいた」と言い、「風邪」という文字を使います。なぜでしょう?

それは、この言葉のルーツが、中国医学における風(ふう)の邪気=風邪(ふうじゃ)からきているからです。
自然界では、大気の動きによって起こる風ですが、この気候の変化が身体の適応能力を超えた場合に病気を引き起こす原因になると漢方では考えます。

自然界の風がもつ性質から、風邪(ふうじゃ)による身体への影響は次のようになります。

風邪(ふうじゃ)は、身体に入り込むと体内を縦横無尽に走り回り、症状の進行が速く変化しやくなります。
また、自然界の風には軽くて高く舞い上がる性質があることから、この邪気が体内に入りこむと、「悪寒、発熱、頭痛、目、鼻、咽の不調など、身体の表面や上部に症状が出やすくなります。

まさに、風邪(ふうじゃ)による症状は、カゼの症状と一致していますね。

漢方の基本となる古代の中国医学が日本に入ってきたのは奈良時代。
長い歴史の中で、漢方は私たちの会話の中にも知らず知らずのうちに溶け込んでいたようです。

 

山吹 育恵
山吹 育恵 - Ikue Yamabuki[薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師]

東北医科薬科大学を卒業後、病院勤務を経て1990年薬日本堂入社。 2011年までニホンドウ漢方ブティック仙台トラストシティ店で店長を務めた後、20年の臨床経験を活かし、漢方スクールの講師と社内相談員の学術支援に携わる。大自然の力に魅せられ、自然農の考えに触れたことをきっかけに15年前より自らも農業を実践中。

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