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公開日:2024.08.21 更新日:2024.08.211113view

夏の疲れを回復~生脈散

漢方薬のつぶやき vol.22

夏バテは気と水の消耗
暦の上ではすでに秋ですが、体感はまだ暑いこの時期。夏バテや夏の疲れを感じている人が多いと思います。
今回は夏バテの予防や回復にも使われる処方、生脈散(しょうみゃくさん)を紹介します。

まず、夏バテは体でどんなことが起こっているのか、漢方的に見てみましょう。
漢方では、体に不調をきたすほどの暑さを「暑邪(しょじゃ)」といい、夏の不調はこの暑邪によって引き起こされると考えます。
暑邪には、津液(しんえき)を傷(やぶ)り、気を消耗するという性質があります。
津液とは、体を構成する成分である「気・血・水」の水にあたると、ここではイメージしてください。
つまり、暑邪は体の「元気」および「栄養となる水分」を消耗します。

暑さによって大量に発汗して咽が渇き、体内の水分が不足。さらに、汗と一緒に気も体外へ出てしまうことで気の消耗も招きます。
結果、疲労を感じやすく、体がだるい、少し動くだけで動悸・息切れがするなど全身の不調が起こります。

夏バテ・夏の疲れは、暑邪による気と津液の消耗が主な原因です。

発汗後は気も補う
汗をかいたら水分補給だけでなく気も補う。これは夏の養生として大事なポイントです。

暑さで食欲が落ちると、水っぽいものばかり口にして主食がおろそかになることはありませんか?これでは「気」を作りだす栄養が不足します。
汗をかいたら穀類、芋類、豆類、魚や肉など気血になる食材もしっかり摂取することが夏バテの予防になります。

また、気は補うだけでなく消耗を防ぐ視点も大切。
夏は眠りが浅くなり、睡眠不足気味に。お昼寝は夏バテ予防や夏の疲れを回復するのに有効な休息養生です。
昼食後、椅子にもたれたままでいいので10~20分程度、ウトウトすると気血が回復。うたた寝は夏のおすすめ養生です。

気と津液を回復させる生脈散
夏バテや夏の疲れは気と津液の消耗が主な原因。
生脈散(しょうみゃくさん)は、大量の発汗や過労により消耗した気を補い、滋養強壮して体の機能を回復させる処方です。
「気と津液を回復すれば脈も生じる」ことから名付けられたとされます。

効能は、過労・病中病後・虚弱体質による疲労感、動悸、息切れ、不安など。そのほか肺の虚弱による息切れ、喉の乾き、空咳、喘息。心臓の虚弱による動悸、息切れ、脈が弱い、不整脈に適用します。

夏ばて予防や夏の疲れを回復する目的でも用いられています。

3つの生薬の絶妙な連携
人参、麦門冬(ばくもんどう)、五味子(ごみし)

人参は気を補い、暑さと湿度で弱った胃腸の元気回復に効果があります。
麦門冬は肺に潤いを与えて全身の水不足を解消。
五味子は汗の出すぎを抑え、体内の津液を保護します。

シンプルな生薬構成ながら気と津液を補う効果は高く、3つの生薬の見事な連携により汗の出すぎを抑えて、体に元気と潤いを与えます。

陰から陽へ切り替わっていく初秋は夏の疲れをすみやかに回復したい時期。
微妙に変化している体の声を聴きつつ、飲食の仕方や休息のとり方を意識的に変えて自然のリズムに合うように過ごしましょう。

動画で!夏の疲れを回復~生脈散~ 漢方薬のつぶやき

飯田 勝恵
飯田 勝恵 - Katsue Iida[薬剤師・薬日本堂漢方スクール講師]

静岡県立大学薬学部卒業。1998年薬日本堂入社。約10年間の臨床と店長を経験。店舗運営や相談員教育などに携わり、その後「自然・人・社会に役立つ漢方の考えをより多くの人に伝えたい」と講師として活動。薬だけではない漢方の思想や理論に惹かれ、気功や太極拳、瞑想なども生活に取り入れながら漢方・養生を実践している。

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