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公開日:2024.07.21 更新日:2024.08.01764view

六味地黄丸と八味地黄丸のちがい

漢方薬のつぶやき vol.21

二味のちがい
六味地黄丸(ろくみじおうがん)と八味地黄丸(はちみじおうがん)。
漢方薬の名前が似ていて、適用症状も共通するところが多い2つの漢方薬。
どちらを服用すればよいか迷うことが多いようです。

生薬を数えるときに「味(み)」という言葉を使います。
八味地黄丸は8つの生薬(八味)で構成されています。そこから2つの生薬(二味)を抜くと六味地黄丸になります。
つまり、八味地黄丸には六味地黄丸がまるごと入っています!
ですから効能は似ているわけですが、大きな違いもあります。

二味の有無が効能にどのような違いをつくるのか?
六味地黄丸と八味地黄丸の共通する効能と、二味による違いについてお伝えします。

腎のはたらきを高める漢方薬
八味地黄丸のことを「腎気丸(じんきがん)」ともいいます。
「腎気」とは、腎の機能のこと。
「腎気丸」は腎の働きを高める薬です。

では、腎の働きとは?
腎は「精」と呼ばれる生命エネルギーを蓄える臓です。
精は生長、発育、生殖活動を支え、呼吸、脳や耳の機能、骨、髪にも関係します。

そして、加齢とともに生じる不調の多くは腎の働きの衰えから起こります。

加齢による不調とは
加齢とともに起こる不調とは。
疲れやすい、かすみ目、老眼、足腰に力が入らない、慢性的な腰痛、髪にハリがなくなる、白髪が増える、骨や歯が弱くなる、耳鳴り、耳が聞こえにくい、排尿トラブル、記憶力の低下など。

これらの不調は腎気の衰えと関係しており、六味地黄丸と八味地黄丸が適用する共通の症状といえます。

二味のはたらきとその影響
八味地黄丸から二味ひいて六味地黄丸になる。
その二味とは、「桂皮(けいひ)」と「炮附子(ほうぶし)」という生薬です。
詳しいことは省き一言でいうと、2つの生薬は「温める働き」があります。

二味の働きは漢方薬全体の性質にも影響し、八味地黄丸は温める性質の漢方薬、六味地黄丸は冷やす性質の漢方薬となります。
八味地黄丸は腎気の衰えによる不調に「冷え」の症状が加わったものに適用します。冷えの症状とは、全身や足腰の冷え、頻尿、夜間尿、むくみなどです。
また、六味地黄丸は腎気の衰えによる不調に「熱」の症状が加わったものに用います。熱の症状とは、のぼせ、手足のほてり、口の渇き、不眠などです。

大きな違いとは、陰陽の違い
"名前の似ている六味地黄丸と八味地黄丸。
2つの漢方薬はともに、腎の働きを高めるという共通の効果があります。
しかし、一方は温める性質をもち、他方は冷やす性質をもつ。温めるか冷やすかは陰陽が反対であり、大きな違いです。

冷え症状のときは温める性質の八味地黄丸、熱感のある症状には冷やす性質の六味地黄丸。どちらを服用すればよいか迷う際にはひとつの参考にしていただければと思います。

体質と症状のあらわれ方は複雑ですので、冷えの症状と熱の症状が混ざっていることもあります。ご自身で判断しにくい場合には、漢方専門の医療機関や薬局に相談しましょう。



動画で!八味地黄丸と六味地黄丸 二味のちがい 漢方薬のつぶやき


飯田 勝恵
飯田 勝恵 - Katsue Iida[薬剤師・薬日本堂漢方スクール講師]

静岡県立大学薬学部卒業。1998年薬日本堂入社。約10年間の臨床と店長を経験。店舗運営や相談員教育などに携わり、その後「自然・人・社会に役立つ漢方の考えをより多くの人に伝えたい」と講師として活動。薬だけではない漢方の思想や理論に惹かれ、気功や太極拳、瞑想なども生活に取り入れながら漢方・養生を実践している。

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