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公開日:2023.02.20 更新日:2024.01.102921view

お腹が冷えて痛いときに、安中散

漢方薬のつぶやき vol.4

漢方系胃腸薬の主流
安中散、補中益気湯、大建中湯。漢方薬の名前に「中」という文字が見られます。
漢方では人体の胸と腹を合わせた空間を、上・中・下の3つの領域に分けて表現します。「中」とは横隔膜より下で臍から上、つまり上腹部をあらわします。

「中を安ずる」ことから名付けられた安中散。「中」には胃・肝臓・膵臓などが位置していますが、安中散は主に胃のトラブルに使います。

市販されている漢方成分の胃腸薬には安中散がベースになっているものがいくつかあります。漢方系胃腸薬では主流ともいえます。
もしかすると皆さんの自宅や実家にもあって、それとは知らずに服用したことがあるかもしれません。
上手に使っていただくために、安中散の効能と注意点をお伝えします。

冷たいものの過飲食による胃痛に
安中散の効能を一言でいうと、「胃を温めて痛みを止める薬」です。

氷の入った飲み物や冷たいビールを飲んだとき。生野菜や果物、刺身など冷やす性質の食材を過食したとき。胃が冷えて、お腹が痛くなることがあります。冷えから消化不良となり、急な下痢、お腹が張って苦しいなどの症状を伴うことも。
安中散は、冷たいものの過食や冷気にあたるなどして腹部が急激に冷えて起こった胃痛や腹痛を改善する漢方薬です。

“温め”と“止痛”の生薬配合で月経痛にも
安中散には皆さんが聞いたことのある生薬も配合されています。

桂皮・・・シナモン、牡蛎(ボレイ)・・・牡蠣の貝殻、茴香(ウイキョウ)・・・フェンネル、甘草・・・リコリス。このほか合わせて7つの生薬から構成されています。

注目したいのは、7つのうち5つが温める性質の生薬であること。また、気血の流れを整えて止痛にはたらく生薬の配合も特徴です。
ちなみに、冷えて痛むのは、気血の流れが滞るからです。
安中散がもつ温めて痛みを止める効果は、胃痛だけでなく、冷えると酷くなる月経痛にも応用できます。

食べ過ぎ・飲み過ぎは安中散か?
このように、安中散の効能は温めることにあります。ということは、熱の性質をもつ症状には不適です。これが注意点です。

胃腸のトラブルでは、症状が“冷え“の性質なのか”熱“の性質なのかという区別をしましょう。
確認するポイントは2つ。ひとつは飲食したもの。辛いもの、味の濃いもの、脂っこいものの摂り過ぎ、お酒の飲み過ぎは胃に熱をもちやすいです。
ふたつめは症状。胃痛そのものは、冷えでも熱でも起こります。胃に熱をもっていると、胃痛のほか、胸やけ、げっぷ、口臭、口の渇きを伴います。
舌の苔の色を観察するとわかりやすいです。苔が黄色くなっていれば熱です。

“漢方系胃腸薬の主流“なだけに、食事会のあと、疲れた胃腸の回復にと使われることがある安中散ですが、食べ過ぎ・飲み過ぎの場合には胃に熱をもっていることが多いです。冷えか熱かをより正しく判断して安全に漢方薬を活用しましょう。


動画でも!お腹が冷えて痛い時に、安中散 身近な漢方系胃腸薬の主流ともいえる安中散を解説


飯田 勝恵
飯田 勝恵 - Katsue Iida[薬剤師・薬日本堂漢方スクール講師]

静岡県立大学薬学部卒業。1998年薬日本堂入社。約10年間の臨床と店長を経験。店舗運営や相談員教育などに携わり、その後「自然・人・社会に役立つ漢方の考えをより多くの人に伝えたい」と講師として活動。薬だけではない漢方の思想や理論に惹かれ、気功や太極拳、瞑想なども生活に取り入れながら漢方・養生を実践している。

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