- 飯田 勝恵 - Katsue Iida[薬剤師・薬日本堂漢方スクール講師]
静岡県立大学薬学部卒業。1998年薬日本堂入社。約10年間の臨床と店長を経験。店舗運営や相談員教育などに携わり、その後「自然・人・社会に役立つ漢方の考えをより多くの人に伝えたい」と講師として活動。薬だけではない漢方の思想や理論に惹かれ、気功や太極拳、瞑想なども生活に取り入れながら漢方・養生を実践している。
「眠いのに眠れない」タイプの養生
眠りと漢方~眠れぬ夜のために vol.5
血(けつ)の補充と消費のバランスをとる
体と心の栄養である血(けつ)が不足しているために起こる「眠いのに眠れない」不眠は、体力のない人や、虚弱な人に多くみられる不眠です。
このタイプの不眠では飲食によって血(けつ)を補うことが養生の基本なのですが、血(けつ)不足の人は、胃腸が弱いなどの根本的な原因により、そもそも血(けつ)を補うことが苦手な体質であることも少なくありません。
そこで、飲食で血(けつ)を「補う」だけでなく、血(けつ)を「消耗しない」という視点も大切です。
エネルギーである血(けつ)の補充と消費のバランスをとるイメージです。
血(けつ)の消耗が大きい活動・機能
では、何によって血(けつ)が消耗しやすいのでしょうか?
日常生活において血(けつ)の消耗が大きい活動や機能には、
・筋肉を動かすこと
・思考や記憶など脳を使うこと
・目で見ること
が挙げられます。
普段より多く歩くと足がつる、会議で集中して考えると疲れる。
これらは漢方でいう血(けつ)の消耗です。
意外に思われるかもしれませんが、目を使うことも多くの血(けつ)を消耗します。
漢方では「目は血(けつ)を得て見える」という表現があります。
テレビ、パソコン、タブレットなど、現代は多くの活動で目を酷使しており、目の使い方は全身の健康に関わる課題なのです。
夕方からは意識的に目と脳を休める
目や脳を使わないわけにはいきませんが、意識的に休ませることはできます。
陰陽論では血(けつ)は陰に属し、その消耗を抑えるには陰の時間である夕方以降の過ごし方が大切です。
疲労を強く感じるような仕事や込み入った考え事は日中にするようにして、夕方以降は心地よいこと、スッキリすること、楽しいことをして脳がリラックスできる過ごし方をしましょう。
テレビやパソコンも夕方以降は見過ぎないように控えて、目を休めることを心掛けてください。
また、漢方では夜、横になることで血(けつ)が蓄えられて眠りに入ると考えます。
漢方的体内時計の観点でみるとそのタイミングは23時頃。
23時以降に起きて活動すると血(けつ)の消耗が大きいです。
布団の中でタブレットを見るのも控えましょう。
不眠が続くと、日中身体がだるくなったり、頭がぼーっとすることがありますね。
そんなときには「抑目静耳(よくもくせいじ)」がお勧めです。
椅子に座って肩の力を抜き、目をつぶって3分間休む。
気血(きけつ)が回復し、目や頭がスッキリして身体が軽く感じられます。
疲れを感じたときはもちろん、昼食後や夕方など定期的に取り入れるといいでしょう。
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