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公開日:2021.06.05 更新日:2021.07.2139923view

「舌に歯の痕がついている」ときの原因・養生

舌は口ほどに物を言う ~舌診の話 Vol.4

歯の痕は胃腸虚弱
舌に歯の痕がついている状態は気不足、舌がぽってりとして大きいのは水分代謝不良があることを前回お伝えしました。

舌に歯の痕がついている状態を舌診の用語では「歯痕(しこん)」といい、舌が大きく厚みのある状態を「胖大(はんだい)」といいます。
歯痕(しこん)と胖大(はんだい)は、舌の観察項目(舌は口ほどに物を言う Vol.2)でいうと「舌質(舌本体)の形」の話です。

歯痕(しこん)と胖大(はんだい)は同時に起こることも多く、その場合、原因の多くは胃腸虚弱です。

胃腸は気をつくりだし、水を運ぶ
私たちの身体は、食べて消化し「気」というエネルギーをつくりだします。

食べたものを「気」に変化させる役割が胃腸ですので、胃腸が弱いと気不足になります。
舌は通常上顎についていますが、気不足では舌が下顎の位置に下がりやすくなり、同時に空気が抜けてきた風船のように舌に張りがなくなって、歯の痕がつきます。

また、胃腸は飲食物から得た水を必要なところに運ぶ仕事もしています。
胃腸の不調が水の停滞を引き起こします。
意外かも知れませんが、身体のむくみの原因が胃腸にあることも多いです。

そして水が停滞すると、身体がむくむのと同様に舌もむくみ、大きく厚みのあるぽってりとした舌になります。

気の消耗を防ぎ、胃腸を労わる養生を
歯の痕がついていて大きく厚みのある舌の人は、気の消耗を出来るだけ防ぐことと、胃腸を労わることが養生のポイントです。

気不足の人は、あまり根を詰めて活動すると、気の消耗が大きく回復に時間がかかりますので、こまめに休息をとるようにすることが大切です。
疲れた時や昼食後は椅子に座ったまま3分間、目をつぶって静かにしてみてください。
気血が回復し活力が湧いてきます。

胃腸は冷たいものが苦手です。
日頃から温かいものを飲食するようにして、よく噛みましょう。
食事の味付けはあまり濃くならないように薄味を意識してください。

「気は朝つくられる」といわれますので、朝食は出来れば摂りたいです。
朝、食欲がない人は前日の夕食の摂り方が影響しているかもしれません。
夕食は「早め軽め」を意識して、時刻・質・量を胃腸に負担のないように工夫しましょう。

激しい運動は避けて、太陽のもと散歩をしたり、気功やヨガなど呼吸を意識しながら行う運動がおすすめです。
汗をかきすぎると気を消耗しますので運動や入浴の際、ご注意を。

梅雨時期や季節の変わり目は胃腸に負担がかかりやすいです。
この時季はスケジュールを詰め込みすぎず、気持ちにゆとりをもてる過ごし方を心がけましょう。





飯田 勝恵
飯田 勝恵 - Katsue Iida[薬剤師・薬日本堂漢方スクール講師]

静岡県立大学薬学部卒業。1998年薬日本堂入社。約10年間の臨床と店長を経験。店舗運営や相談員教育などに携わり、その後「自然・人・社会に役立つ漢方の考えをより多くの人に伝えたい」と講師として活動。薬だけではない漢方の思想や理論に惹かれ、気功や太極拳、瞑想なども生活に取り入れながら漢方・養生を実践している。

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