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公開日:2021.03.20 更新日:2021.03.2067997view

口の中が甘くなる病、苦くなる病がある!?

黄帝と一緒に『素問』を学ぶvol.25

甘いのは美食のせいかも…
普段、「口の中が甘いなあ」「今日は苦いなあ」と感じることはありませんか?
黄帝も、そこのところが気になって、岐伯に問いかけています。
岐伯曰く、口の中が甘いのは脾疸(ひたん)、口の中が苦いのは胆疸(たんたん)という、五臓の気があふれて起こる病の一種だそうです。

漢方・薬膳では、食材や生薬の味は5つ、酸味、苦味、甘味、辛味、鹹味(かんみ=塩味)があるとしています。
飲食したものは、まず口から胃に入ります。その後、脾(ひ)という消化吸収全般を担う臓が、五味を該当する五臓に分配すると考えられています。甘味は五臓六腑の脾胃(ひい)、苦味は肝胆(かんたん)と連動しています。

いつも甘味のあるおいしい料理を食べていると、甘味の液体が余って口にのぼっていき、口の中が甘く感じます。甘味は穀類や豆、芋、果物など、エネルギーを満たすものが多く、気持ちも満ちて幸せな気分になります。

ついつい食べ過ぎて太ってしまうこともあるでしょう。肥満になると体内に熱が生じて、お腹がふくれ、とにかく水がほしくなります。実はこの状態を消渇(しょうかち)といい、糖尿病であらわれる症状をさしています。

苦いのは決断力が鈍っているサイン?
苦味は気の巡りと血の貯蔵を担う肝(かん)、胆汁の排出と決断力を担う胆(たん)と連動しています。お酒の飲みすぎや味の濃い脂っこい料理の食べすぎは、肝胆に負担をかけて熱を生じます。現代医学でも肝炎や胆のう炎などがありますね。

このような時、胆の力が弱って胆汁がためられず、あふれて口にのぼってくるので口の中が苦くなると考えます。胆に貯えている胆力(たんりき)、決断力も鈍るので、このような状態では何かをやろうと思っても決断できなくなります。机の上も散らかって、何から手をつけていいやらという状態に…

口の中が苦く感じる胆疸は、決断力が鈍っているサインかもしれません。

飲食や環境が身体の状態を左右する
漢方では、人の状態を診る時に、目の前の症状だけでなく、普段飲食しているものや、環境の変化なども重視します。

職業が変わったり、結婚や子供の誕生など、私たちの環境はめまぐるしく変化するものです。この変化は、生活習慣や精神状態にも影響します。そこから身体を起こし、不調に至ることもあります。

『黄帝内経:素問』では、不調を起こしている人の背景を読み取るように伝えています。何か不調があらわれた時には、この症状を身体からのサインととらえて、自分の生活環境や食習慣などを見直す機会にしてみましょう。

「黄帝と一緒に『素問』を学ぶ」というテーマで25回にわたり、漢方の知恵を紹介してまいりましたが、ここで一旦、幕引きとさせていただきます。

また新たなテーマで漢方・養生の知恵を紹介したいと思います。



齋藤 友香理
齋藤 友香理 - Yukari Saito[薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師]

1969年北海道生まれ。東京理科大学薬学部卒業後、薬日本堂入社。10年以上臨床を経験し、平成20年4月までニホンドウ漢方ブティック青山で店長を務めていた。多くの女性と悩みを共有した実績を持つ。講師となった現在、薬日本堂漢方スクールで教壇に立つかたわら社員教育にも携わり、「養生を指導できる人材」の育成に励んでいる。分かりやすい解説と気さくな人柄で、幅広い年齢層から支持されている。

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