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公開日:2021.01.20 更新日:2021.01.208090view

ふさがって通じない症状「痹証(ひしょう)」って何?

黄帝と一緒に『素問』を学ぶvol.23

めぐりが悪いと痛む…
1月に入って、まだまだ寒い日が続いています。
このような時期によくみられるのが、関節痛や腰痛、リウマチなどの痛み。
内科で血液検査をしようか、はたまた、整形外科に行ったらよいのか、悩むところです。

漢方では、さまざまな痛みは「不通則痛(ふつうそくつう)」といって、めぐりが悪いことで生じると考えます。

皆さんは、正座をした後に脚がしびれて痛み、立ち上がれないという経験をしたことがあるでしょうか?
これは正座することで、膝から下の血行が悪くなって生じます。まさに「不通則痛」です。

このようにしびれて痛む症状を、漢方では痹証(ひしょう)というものに分類しています。
「痹」とは「ふさがって通じない」ということを意味しており、さまざまな痹証があります。

ちなみに、血行不良で生じる痛みの改善に、よく用いられるのが紅花(こうか)です。
漢方の入浴剤、お茶、薬膳など、幅広く利用されています。(ただし、妊娠中は禁忌)

風と寒さと湿気、原因違いで異なる痹証に
外でながらく風に当たっていると、上半身のあちらこちらに痛みが生じることがあります。
これを「行痹(こうひ)」といいます。
症状が風のように移動するのが特徴です。エアコンの風でも起こるので要注意。

寒さで冷えて痛みが生じるものは「痛痹(つうひ)」といいます。
冷えによる痛みは強く、場所が固定しているのが特徴です。冬の寒い日はもちろんのこと、普段から冷たいものや生ものを摂りすぎても起こるので、油断してはいけません。

ジメジメした梅雨や雨降りの時に、関節がこわばったり、身体が重だるく感じることがあります。
これを「着痹(ちゃくひ)」といいます。
粘りのある水たまりが体内にあると考えてみてください。粘るものは、その場にくっついて剝がしづらいので、なかなか改善しないのが特徴です。汗をかいたシャツや雨に打たれた衣類をそのまま着続けても起こるので、注意しましょう。

季節と五臓の痹証
先に挙げた風、寒さ、湿気は、季節によって五臓を傷めることがあります。
この時の痹証は、痛みだけでなく、何かがふさがって苦しい状態として分類されています。

冬の腎痹…水がめぐらず、強くむくむ
春の肝痹…気分が落ち着かず、下腹がパンパンに張って苦しい
夏の心痹…血液循環が悪くなって、胸苦しく動悸する
梅雨の脾痹…手足がだるくなり、水っぽい液体を吐き、のどが詰まる
秋の肺痹…胸が苦しく、呼吸が荒くなる

大切なのは、季節によって不調があらわれやすい五臓があるので、季節に応じて過ごし方を意識すること。
そして心をおだやかに保つことです。

春はのびやかに、夏は暑さをしのぎながら活動的にすごしましょう。
ジメジメした梅雨には、水分の摂り方に注意して、風通しを良くしておくことが大切です。

秋は乾燥によって鼻やのど、肌の不調が起こるので、水分や油分で潤すことが必要。
冬は首、腰、足首の冷えに注意して、運動や入浴で血行をよくしましょう。

漢方養生の知恵で、さまざまな不調を予防したいですね。



齋藤 友香理
齋藤 友香理 - Yukari Saito[薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師]

1969年北海道生まれ。東京理科大学薬学部卒業後、薬日本堂入社。10年以上臨床を経験し、平成20年4月までニホンドウ漢方ブティック青山で店長を務めていた。多くの女性と悩みを共有した実績を持つ。講師となった現在、薬日本堂漢方スクールで教壇に立つかたわら社員教育にも携わり、「養生を指導できる人材」の育成に励んでいる。分かりやすい解説と気さくな人柄で、幅広い年齢層から支持されている。

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