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公開日:2020.02.10 更新日:2020.05.224116view

“香り”と“苦味”で春のイライラと頭痛を解消!

「七十二候」の旬を愉しむ季節の養生 vol.5

一年のはじまり「立春」

暦の上では「立春」となり、ようやく春の足音が聞こえ始める頃となりました。
旧暦では、立春に近い新月の日が一月一日となっていることから、立春は春の始まりとともに一年のスタートとされていました。今でも、お正月のことを「新春」「初春」というのは、その名残が残っているといえるでしょう。
「春(はる)」の語源には、「万物が発する」「草木の芽が張る」「晴れの日が多い」「年が明けて開(は)る」などの由来が諸説あります。
そして、二月の和風月明「如月(きさらぎ)」は、寒さで衣を更に重ねて着ることから「衣更着(きさらぎ)」、気候が陽気になるので「気更来(きさらぎ)」「息更来(きさらぎ)」、草木が生えはじめるから「生更木(きさらぎ)」といった由来があるそうです。
これらの言葉には、寒さの中に生命の息吹が産声を上げる姿が感じられます。

七十二候で知る「大自然の目覚め」

二月の「二十四節気」と「七十二候」をみてみましょう。

《立春》春の兆しが感じられる頃

初候
2/4~
一候 東風解凍(はるかぜこおりとく)
春の風が川や湖の氷を解かし始める
次候
2/9~
二候 黄鴬睍睆(うぐいすなく)
山里で鴬が鳴き始める
末候
2/14~
三候 魚上氷(うおこおりをいづる)
水がぬるみ、割れた氷の間から魚が飛び出る

《雨水》雪が雨に変わり水が温まる頃

初候
2/19~
四候 土脉潤起(どみゃくうるおいおこる)
雪が春の雨にかわり、土が潤い始める
次候
2/24~
五候 霞始靆(かすみはじめてたなびく)
霞がたなびき始める
末候
2/29~
六候 草木萌動(そうもくもえうごく)
草木が芽吹き始める

七十二候では、春の訪れをとても美しく描写しています。冬の冷たい北風によって閉じ込められていた大自然の営みを、暖かな「東風(こち)」がゆっくりと溶かし始めます。里には鴬の美しい鳴き声が響きわたり、冬の終わりを氷の下でじっと待っていた魚が跳ね上がり、生き物たちが嬉々と感じられます。そして、雪は雨となり大地が潤い、眠りから覚めた草木たちの芽吹きに、ゆっくりと春めいてくる自然の姿が感じられます。

寒さが和らぎ、動植物が目覚め始めるこの時期は、人の身体と心も目覚め始める季節です。
冬の間、低下しがちだった新陳代謝や血液循環などが次第に活発になってきます。
この時期、雨水の末候で芽吹き始める山菜や旬の野菜が、春の身体を助けてくれます。

旬の野菜や山菜で春の不調を解消!

漢方では、春先に旬を迎える香り豊かな野菜が、寒い冬に滞りがちだった「気」のめぐりをよくして、不安定になりがちな心のバランスを整えてくれると考えられています。

セロリ
五臓の「肝」の余分な熱を鎮めることで、春に起こりやすい目の充血やイライラ、のぼせなどの解消に用いることができます。すじをとってサラダにしたり、スープに入れたりして活用してみましょう。

春菊
「気」のめぐりをよくするので、イライラや不眠などに用いられるほか、痰がつまっている時やおなかの張り、食欲不振にも役立ちます。
おひたしや鍋物、和え物でいただけます。ゆですぎると香りが逃げるので注意しましょう。

山菜がもつ苦味は解毒を助け、冬の間、体内にたまった老廃物を身体の外に追い出してくれる役割があるため、春の身体には嬉しい食材と考えられています。

ウド
ウドの根は生薬名を独活(ドッカツ)といい、かぜの初期にあらわれる頭痛や関節痛、肩こりなどに用いられます。春から初夏にかけて芽吹いた頃に採って食用にしますが、天ぷらや煮物、お味噌汁に入れるなど幅広く活用できます。

フキノトウ
咳を鎮め、痰を切るはたらきや胃腸を丈夫にするはたらきがあり、解毒を助け新陳代謝を促します。
フキノトウは早春、葉が出る前に採ります。天ぷらや、味噌和えなどでいただいてみましょう。

注)山菜は少し食べるぐらいで丁度よいといわれています。食べ過ぎにはご注意ください。

これからの季節は、しだいに暖かく、そして日が長くなり日差しも明るくなってきます。
天気の良い日には外に出て、日ごとに変化する春風景を探してみましょう。

山吹 育恵
山吹 育恵 - Ikue Yamabuki[薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師]

東北医科薬科大学を卒業後、病院勤務を経て1990年薬日本堂入社。 2011年までニホンドウ漢方ブティック仙台トラストシティ店で店長を務めた後、20年の臨床経験を活かし、漢方スクールの講師と社内相談員の学術支援に携わる。大自然の力に魅せられ、自然農の考えに触れたことをきっかけに15年前より自らも農業を実践中。

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