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公開日:2019.06.10 更新日:2020.05.184232view

夏バテ、夏かぜ…夏の不調にチカラを発揮する“梅”

「七十二候」の旬を愉しむ季節の養生 vol.1

季節に息づく自然の恵み

漢方スクール仙台校で講師を務める山吹です。
突然ですが、「身土不二(しんどふじ)」という言葉、ご存知ですか?本来は「身土不二(しんどふに)」という仏教用語であった言葉ですが、食養生の智慧としては「その土地で育ったもの、その季節にとれた旬のものが身体にとってよいもの」という考え方として知られています。
さて、先人たちはこの季節をどのように捉えていたのでしょうか?

古くから、人々が季節を知る目安として取り入れていた二十四節気と七十二候という暦があります。
季節を表すのに、一年を四等分した春夏秋冬の四季の他、二十四等分した「二十四節気」、七十二等分した「七十二候」が用いられています。
特に「七十二候」からは、四季を通じての草木や動物の様子、こまやかな季節の移ろいや、身近にある自然の恵みが感じられます。
このシリーズでは、この「七十二候」をたどりながら旬の恵と、身体とのかかわりについてふれてみましょう。

梅子黄(うめのみ黄ばむ)芒種‐末候

六月の「二十四節気」と「七十二候」をみてみましょう。

 

二十四節気

七十二候

六月

芒種

芒種は稲や麦など
種まきの時期

6/6頃~

初候

二十五候 螳螂生(かまきりしょうず)

次候

二十六候 腐草為蛍(ふそうほたるとなる)

末候

二十七候 梅子黄(うめのみきなり)

夏至

一年で最も昼が長い。

6/22頃~

初候

二十八候 乃東枯(なつかれくさかれる)

次候

二十九候 菖蒲華(あやめのはなさく)

末候

三十候 半夏生(はんげしょうず)

春に花開き、人々の目を楽しませてくれた梅の花が、六月中旬入り、
梅雨の雨にうたれながら、実が黄色く熟してきます。

夏疲れを癒す“梅の実”のはたらき

梅の実は、烏梅(うばい)という生薬として漢方薬にも使われています。
熟していない梅の実をかまどの煙で黒くいぶし、乾燥させて作られます。
烏梅には「斂肺:肺の調子を調える」「固渋:漏れを防ぐ」「生津:潤いを作る」「安蛔:虫下し」のはたらきがあり、次のような症状に応用されます。

・慢性の咳…杏仁といっしょに
・慢性の下痢…人参といっしょに
・発熱や汗かき、下痢に…葛粉といっしょに
・疲労倦怠、夏バテ、かぜの初期に…

暮らしの中では梅干しを代用してみてもよいでしょう。
注)青梅は生で食べないこと

漢方では、梅の実がもつ酸味に、便、尿、汗などが漏れ出るのを防ぐはたらきがあると考えられています。
そのため、汗がだらだらと止まらない、便が漏れやすくなる慢性の下痢、といった症状に梅の実が用いられます。
また、梅の実には、のどの渇きを潤すはたらきもあります。梅干しを見ただけで唾がでてくることがありますね。

漢方では大量に汗をかくことは、体の水分だけではなくエネルギーも不足させると考えます。
暑さによって大量に汗をかくと、体内の水分が消耗し咽の渇きをひきおこすだけではなく、同時にエネルギーも外に漏れ出て夏バテや夏かぜも起こりやすくなります。
咽の渇きを潤し、汗のかきすぎや下痢を防ぎ、夏の疲れや夏かぜを予防できる梅の実は、まさに夏の身体にありがたい自然からの贈り物といえるでしょう。

暮らしの中の“梅の実”活用

旬の頃に収穫した梅の実を使って、梅干しや梅酒をつくることを「梅しごと」といわれていると聞いたことがあります。梅の実の活用は幅広く、他にも梅シロップ、梅ジャム、梅酢、梅エキス…などなど、この時期から「梅しごと」を始める方も多いのではないでしょうか。

漢方では酸味と甘味の組み合わせは潤いを養うという考えがあります。
梅の実の酸味とクコの実の甘味を組み合わせて、暑さで渇いた夏の身体に潤いを補ってあげましょう。

梅とクコの実のコンポート
≪材料≫
黄色く熟した梅…1㎏
水…1ℓ
きび糖…600g
クコの実…大さじ1杯

≪作り方≫
①  洗った梅を1時間ほど水に浸してあく抜きをする。
②  鍋に梅と水、きび糖、クコの実を入れ中火にかけて沸騰させ、1~2分弱火で煮たら火を止める。
③  7~8時間、蓋をして放置した後、ビンに入れて冷蔵庫で保存する。
*なるべく早めにお召し上がりください。
**煮沸消毒したビンに保存しましょう。

山吹 育恵
山吹 育恵 - Ikue Yamabuki[薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師]

東北医科薬科大学を卒業後、病院勤務を経て1990年薬日本堂入社。 2011年までニホンドウ漢方ブティック仙台トラストシティ店で店長を務めた後、20年の臨床経験を活かし、漢方スクールの講師と社内相談員の学術支援に携わる。大自然の力に魅せられ、自然農の考えに触れたことをきっかけに15年前より自らも農業を実践中。

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