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公開日:2018.11.05 更新日:2020.05.195842view

望診(ぼうしん)の神秘「望んで之を知るを神と言う」

鍼灸雑話 その10

望診との出会い

私が、望診の世界に触れるキッカケとなった話・・・

今から10年ほど前。とある事件があり、私の後輩が亡くなりました。
その時、
「もし、事件前に彼に会うことがあったなら、私は何か異変を感じられただろうか?そうして、彼の運命を変えることは出来ただろうか?」
という疑問が沸き起こり、矢も楯もたまらず鍼の師匠に電話をしました。
すると、
「今朝から、きっとそういう電話があるだろうと思っていたので、先ほど望診の秘伝書を用意したところだ。明日そっちに送るので、まず読め。読んで必要だと思えばコピーを取ることを許可しよう」と言われました。
そうして、段ボールいっぱいの書物、内部資料、師匠の体験が綴られた筆記が送られてきたのです…

漢方医学には「四診(ししん)」という四段階の診断方法があります。
望診というのは、その内のひとつ。
主に視覚を通して人や物を見て判断をする技法で「相法(そうほう)」ともいいます。
手相、人相、家相、墓相、風水、そういったものの総称だと思ってください。
例えば、海岸に生える木の幹が曲がっていたなら、そこは風の強い場所であるのがわかるし、空に黒い雲が増えてきたら雨が近いことがわかります。町を歩けば、活気のある場所か否か、人気のある店か否か、そういうものも何となく勘づくものです。
現れた相には、理由と原因があるものです。

送られてきた書物を読みながら、人の生死、病気の状態はもちろん、いつどんな事件に巻き込まれるとか、そんなことまでわかるものか!?と衝撃を受けつつ、本当に色んなことを事細かに読み取ってきた先人たちの言葉に重みを感じました。
そうして、
「こういうことは出来たからといって良いことばかりは起きない。悲しいことの方が多い。だから先生方も、わかっても何も言わなくなったし、町中には出かけず、人に会うことも減っていった。それでも、お前がこの世界に踏み込むと言うのなら先生方も喜ぶだろうから、実践して身につけろ」
と師匠に言われたのが印象的でした。

古典『難経(なんぎょう)』に見る望診

鍼灸の古典医学書のひとつ『難経』に、四診についての有名な記述があります。

望んで之を知る、之を神と謂う。
聞いて之を知る、之を聖と謂う。
問うて之を知る、之を工と謂う。
脉を切して之を知る、之を巧と謂うとは何の謂ぞや。
(中略)
経に言う、外を以って之を知るを聖と日い、内を以って之を知るを神と日うは此れ之の謂なり。

よく、「姿勢の状態」「顔色の状態」を見ることを望診と言われますが、それは誰でも見ればわかるもので、それをわざわざ「神」と言うのか?というのが、私の学生時代からの疑問でした。
師から送られてきた書物には、確かに体格、目、顎、眉、爪や指の形・・・といったものから読取る方法の記載もありますが、本当の望診は全く別物でした。
望診に限らず、問診にしても脈診にしても触診にしても、結局は語られる言葉の裏、触れることの出来るものの裏、つまり「内を以て之を知る」ことが、漢方医学では重要なんだと納得出来ました。

望診での不思議な体験

鍼灸学校を卒業するための卒業試験を終えた直後の話。
同級生の額に、何かで引っ掻いたような赤い筋が斜めに走っているのが見えました。さらに眉間の色がくすんでおり、覇気もありません。
直感的に、彼は追試になるな・・・と思いました。(もちろん、誰にも何も言いません)
試験結果発表で、やはり彼は不合格になり追試を受けることになりました。

別の例では、友人の鼻と眉間の色が悪く、急なトラブル(特に金銭がらみの)に巻き込まれる気がしたので、それとなく注意を促したところ、その数日後に危うくスピード違反で捕まりそうだったところ、ふと私の話を思い出して減速したために難を逃れることが出来た!と礼を言われたことがあります。
そう教えてくれた友人の顔から、悪い気色は消えていました。

こんなことは、大した話でもないのですが、漢方医学を学ぶ方への参考になればと思いオマケで書いてみました。
興味がある方は、薬日本堂漢方スクールで行うセミナーにいらしてください。時間の許す限りお話させてもらいます。

それではまた来月!

山本 浩士
山本 浩士 - Hiroshi Yamamoto

鍼灸師(厚生労働大臣免許・国家資格) 兵庫県西宮市出身。

幼少より武術修行を始め、師より医武同源の考えを教わり、武術と医術の両立を志す。

高校卒業後、大阪のアクションチームに所属し、映像や舞台などで仕事をする。

2009年、はり師・きゅう師の国家資格を取得し、地元兵庫県西宮市で「はり灸楊鍼堂」を開院。千葉の恩師から、参禅や滝行の修行を通して伝統医術を学ぶ。また、数名の先生から江戸時代の鍼術や道家気功鍼などを学び、難病や慢性疾患に対する臨床経験を多く積む。2015年に東京へ移転。2016年から、ポーランドやイタリアで鍼灸、気功、武術、導引按腹の出張講義を開始。2017年11月から、自由が丘で「漢方鍼灸 和氣香風」を妻とともに開業。

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