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公開日:2018.07.01 更新日:2020.05.1910174view

似たものはそこを補う?・・・漢方素材の基礎

ようこそ!はじめての漢方 Vol.3

似類補類(にるいほるい)

古代の人々は、生きていくために、自然界の恵みすべてを口に入れてみたのだと思います。
お腹がいっぱいになるものを常食していき、体調に何らかの変化をきたすものを薬として利用していった。そのような経験を重ねていくうちに、色や形、味、生えている場所などから、どのような薬効があるのか推測していったのではと考えられます。これを、似類補類(にるいほるい)と言います。似ているものはそこを補うという考え方で、同物同治、象形薬理とも言います。

例えば、
〇赤い花は、婦人病などの血に良いのでは(紅花・サフラン・牡丹・芍薬など)
〇匂いが良いものは、目に直接見えない気を巡らすのでは(桂皮・薄荷・厚朴・紫蘇など)
〇水辺に育つもの、あるいは吸湿性のものは、利水作用があるのでは(沢瀉・猪苓・半夏など)
〇中が空洞のものも水の巡りをよくするのでは(麻黄・木通など)

他にも、脳の形をしているからボケ防止にクルミがいいのでは・・・、
木に寄生する霊芝(れいし)や、虫に寄生する冬虫夏草(とうちゅうかそう)は、体にできた(寄生)異物にいいのでは、と考えガンなどに使われてきたのかもしれません。

必ずしもイコールにならないものもありますが、現代になり、成分分析などから実際の効能効果と今までの使い方が合っているという科学的な根拠が整理されています。

改めて古代の人々の、自然界とのかかわりの深さと、生きる知恵に感心させられます。

“しゃっくり”に柿の蔕(へた)が効くのも似類補類?

柿蔕湯(していとう)という漢方薬の効能効果は“しゃっくり”。
おそらく日本の医薬品でしゃっくりの効能効果があるのは数少ないと思います。
でも、なぜしゃっくりに柿の蔕が良いと古代の人は思ったのか?

あくまで推測にはなりますが、上から下にボトンと落ちる柿の実を見て、上に上がる症状(しゃっくりや咳、げっぷなど)を、下に下げる効果があるのでは、と思ったのではないでしょうか。

このような発想で、生薬や民間薬の働きや効能効果を見ていくのも楽しいですね。

漢方薬は生薬(しょうやく)の組み合わせでできています。

現在、日本薬局方に収載されている漢方薬は、212処方。その漢方薬は、生薬(しょうやく)約130種類の組み合わせでできています。生薬について1つ1つ勉強する学問を、本草学(ほんぞうがく)といいます。

本草について記された『神農本草経(しんのうほんぞうけい)』は、Vol2で紹介した『傷寒論』と同じく後漢時代の書で、大変重要視されています。
神農とは、古代中国の帝王で、人々に農耕を教え、日に百草をなめて薬を創始したと言われています。
毎年11月23日には、大阪道修町(どしょうまち)の少彦名神社や東京の湯島聖堂で「神農祭」が催されていますので足を運んでみてはいかがでしょう?

『神農本草経』は、生薬を上薬、中薬、下薬に分類されています。
上薬は、生命を養う薬             ・・・養命薬(人参・棗・クコなど)
中薬は、心身のバランスを取り健康を保つ薬・・・養生薬(葛根・当帰・芍薬など)
下薬は、病気の治療に用いられる薬     ・・・治療薬(大黄・附子・半夏など)

病気を予防する薬を上のランク、病気を治療する薬を”下のランクに位置していることから、生薬は病気を治療するためのものではなく、病気を予防し、虚弱な身体を強くし、元気に生きるためのものという考え方であったことがわかりますね。

鈴木 養平
鈴木 養平 - Youhei Suzuki[薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師]

1969年宮城県生まれ。東北医科薬科大学卒業後、薬日本堂入社。臨床を経験し、店舗運営、教育、調剤、広報販促に携わる。札幌に勤務中、TVの漢方コーナーにてレギュラー出演。漢方薬による体質改善の指導・研究にあたる一方で、“漢方をより身近に”とセミナー講師・雑誌・本の監修(『おうちでできる漢方ごはん』『かんたん・おいしい薬膳レシピ』)で活躍中

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