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公開日:2018.06.20 更新日:2020.05.194661view

簡単で安全、かつ効果的な養生法 ~ 呼吸

気の省エネ生活 vol.12

人体の“気”とは生命活動を支える基本物質で、両親から受け継いで腎に貯えられている「先天の気」と生まれたのち自分で培っていく「後天の気」があります。そして「後天の気」は飲食物から得られる“地の気”と、大気から呼吸によって取り込まれる“天の気”からつくられると考えます。
呼吸が大切であることは言うまでもありませんが、無意識におこなわれているためその大切さは忘れられがちです。今回は呼吸について見ていきましょう。

「正しい呼吸は健康への鍵である」

『人はなぜ治るのか』(アンドルー・ワイル著)に“健康と病気の十大原理”という記述があります。「正しい呼吸は健康への鍵である」とはその十大原理の中のひとつです。

呼吸は完全に随意的であると同時に完全に不随意でもある唯一の機能だという点で、他に類をみない。それは精神と身体を結ぶ架け橋であると同時に、意識と無意識とを結ぶ架け橋でもある。正しい呼吸は中枢神経系に栄養を行き渡らせ、体内のさまざまなリズムに調和的なパターンをつくり出し、気分や感情を整える。

正しい呼吸が心身の健康を促進するための有効な養生法となるわけですが、“正しい呼吸“と言われると、難しいのかな?と少し身構えてしまいますね。

正しい呼吸とは、腹の底から吐き出す深い呼気と肺をじゅうぶんに膨らませる深い吸気であり、ゆっくりとした静かなリズムである。

“深くゆっくりとした静かな呼吸”が健康への鍵となります。

深くゆっくりと静かなリズムで呼吸するには?

呼吸は活動の動静や精神状態によって速くもなり遅くもなります。自律神経のバランスが整っていれば自然と(無意識に)呼吸のリズムと深さは調節されるでしょう。しかし、活動過多、強い緊張、不自然な生活リズムなどが続くと、無意識の呼吸が浅く速くなる傾向があります。
呼吸のリズムや深さの調節が不調となると、意識的にゆっくり深く呼吸しようとしてもまるで空気の薄い場所にいるかのようで、吸ってもお腹まで深く入らず、胸は重くてなんとなく息苦しく、気持ちも落ち着かないといった状態になることがあります。

呼吸は呼気から

呼吸が浅いときに息を深く吸おうとするとかえって吸えないものです。深くゆっくりと静かなリズムで呼吸するには逆に息を吐くことを意識します。
「呼吸」は“呼気”と“吸気”から成ります。“呼気”とは吐く息のことです。人は生まれたときに産声をあげて息を“吐き(呼気)“、いのちが終わるときに息を”引き取り(吸気)”ます。呼吸は“呼気”からスタートすると考えて吐くことを意識すると深くゆっくりになってくるのがわかります。

実際にやってみましょう。

まず、ただ自分の呼吸に意識を向けて、「吐いてるなぁ・・・、吸ってるなぁ・・・」と感じてください。そして新しい呼吸のサイクルが呼気で始まると意識してみましょう。呼気を一呼吸の始まりだと考え吸気のことは何も考えません。お腹をへこませながら空気を吐き出し、お腹を戻すと勝手に空気は入ってきます。多く吐き出せば、それだけ多く空気が入ってきて、自然と深い呼吸になっていきます。

ポイントは、吐く息のことだけ考えれば良いという点です。吸う息は勝手に入ってきますので心配しなくていいのです。

“呼吸法“は習わないと出来ないのでは・・・?と思うかもしれませんが特別なことではありません。無意識に任せずに意識的に呼吸する、それがひとつの”呼吸法“であり養生となります。

呼吸は気を運行させる原動力。全身に栄養を行き渡らせ、五臓六腑の協調性や心身の統一性を整えて正気(病気に対する抵抗力・健康を保とうとする力)を高めることのできる簡単でお金のかからない、しかも効果的な養生法です。
生活の中で呼吸を意識する瞬間をつくり、その瞬間を少しずつ増やしていきましょう。

飯田 勝恵
飯田 勝恵 - Katsue Iida[薬剤師・薬日本堂漢方スクール講師]

静岡県立大学薬学部卒業。1998年薬日本堂入社。約10年間の臨床と店長を経験。店舗運営や相談員教育などに携わり、その後「自然・人・社会に役立つ漢方の考えをより多くの人に伝えたい」と講師として活動。薬だけではない漢方の思想や理論に惹かれ、気功や太極拳、瞑想なども生活に取り入れながら漢方・養生を実践している。

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