- 鈴木 養平 - Youhei Suzuki[薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師]
1969年宮城県生まれ。東北医科薬科大学卒業後、薬日本堂入社。臨床を経験し、店舗運営、教育、調剤、広報販促に携わる。札幌に勤務中、TVの漢方コーナーにてレギュラー出演。漢方薬による体質改善の指導・研究にあたる一方で、“漢方をより身近に”とセミナー講師・雑誌・本の監修(『おうちでできる漢方ごはん』『かんたん・おいしい薬膳レシピ』)で活躍中
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葛根湯は弥生時代にあった?・・漢方の歴史
ようこそ!はじめての漢方 Vol.2
風邪のひき始めのゾクゾクに葛根湯
知っている漢方薬は?と聞かれて、『葛根湯』と答える人はかなり多いと思います。
私も葛根湯愛用者の一人です。
背筋がゾクッとしたとき、朝の鼻水が止まらないとき、冷房や風にあたってくしゃみや鼻水がでたとき、など・・・予防優先で服用していますが、飲むと首から肩甲骨の辺りが温かくなり、寒気や鼻水はおさまります。
葛根湯のベースは桂枝湯(けいしとう)です。
桂枝湯は、桂皮(シナモン)、芍薬、生姜、大棗(ナツメ)、甘草の5つの生薬からできています。
シナモンと生姜で身体を温め、発散することで外敵に対するバリアの働きを強化し、
芍薬とナツメで体内の強化、甘草は全体の調和として働いています。
身体を整える構成になっていますね。
この桂枝湯に、コリをほぐす葛根と、発汗を促すの麻黄(マオウ)を加えると葛根湯になります。
葛根湯は、寒気のある風邪のひきはじめで汗をかいていないときに、身体を温め寒気を外に追い出す働きになります。寒気が無く喉の炎症がひどい場合や、風邪のひき始めで汗をかいている人には不向きというのが分かりますね。
漢方薬は、副作用が少ないと言われていますが、使い方のルールを間違えれば当然、症状は悪化します。長年の使用経験から、どのような時に利用すれば効果が発揮できるかを確立してきた実証医学と言えますね。
まさに、2000年続いている“おばあちゃんの知恵”と言えるでしょう。
葛根湯が記されているのは、傷寒論(しょうかんろん)という書物です。
中国では後漢の時代、200年頃の書と言われていますので、日本でいうと弥生時代にあたります。
農耕が始まり、竪穴式住居、邪馬台国・・・・の弥生時代に、中国では葛根湯が存在していたと考えると、歴史の深さを感じずにはいられません。
これからも葛根湯をありがたく服用していきます!
日本における現存する最古の医薬学書は?
医心方(いしんほう)は984年、丹波康頼(たんばやすより)によって編纂された現存する日本最古の医薬学書です。遣唐使などによる200以上の輸入医書から、日本の風土や思考にあわせ病気の治療法や養生法、医師の心得などを抜き出し全30巻にまとめたものです。
医心とは、医の心得のこと。第一巻には以下のように書かれています。
医師の心得
医師は治療にのぞんで精神を統一し、欲得を捨て、慈悲の誓願をたて、魂あるものすべての病苦を除くことを心掛けよ。(中略)多語、談笑、けんかをせず、道を説いたり是非を論じたり、名声を望んだり、他の医師をそしったり、自慢してはならない。自分を天下無双と思うのは、医師の命取りである
患者の心得としては、医者を信じその指示に従うことが要求されています。薬は人を救うと同時に、使用法を誤れば身体をそこなうのでみだりに薬に頼ることを禁じ、まず病気にならぬ先の養生をすすめています。
1000年以上前の書物ですが、現代にも通じる内容ですね。
医心方に書かれている古代の体操
医心方には、誰でも僅かな時間で行うことができる体操が書かれています。
古代の体操をやってみましょう!
1)両掌をこすりあわせ、その掌で顔をマッサージすると顔がつやつやと輝く
2)こすり合わせた掌で身体を上から下へなでおろすとホカホカする(乾浴)
病気の予防になり、カゼや頭痛も防ぐ
3)起きたとき、手ぬぐいや厚地の白絹でうなじや耳の周りを拭う
数を数えながらホカホカするまでやると身体に良い
4)すみきった朝、起床したとき両手で両耳の端をはさみ、
その手を14回上下させる。こうすると耳が遠くならない
5)力を込めて弓を引きしぼるようにする
6)石を拾うようなポーズをする
7)前後に歩く
8)右手で左手の肩を、左手は後ろにまげて右の背中を同時に叩く。次に手をかえて行う
何事も疲れるまでやらないよう、年齢と体調に応じて毎日やるのがよい。労働は安楽にまさり、働いて身体を動かしていれば特別に体操する必要はない。流れている水は腐らず、使っている木材は朽ちない道理である。
漢方の基本は、養生です。
心と体、運動と休養のバランスを常に意識した生活を送りたいですね。
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