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公開日:2018.03.20 更新日:2020.05.1923451view

快眠の秘訣 ~ 頭と胃に“気”を取られるべからず

気の省エネ生活 vol.9

イライラして眠れない、疲れているのに眠れない、寝たのに疲れがとれない、眠りのお悩みも様々です。
今回は不眠のタイプを紹介しつつ前回(vol.8)の続き、夕方以降の起居について見ていきましょう。

漢方・養生の観点から不眠の原因は次の3つが挙げられます。
●精神的な緊張や興奮、考え過ぎや憂慮
●過食や夜遅い飲食
●起居の不規則、乱れ

「精神的な緊張や興奮、考え過ぎや憂慮」には大きく2つのタイプがあります。

□イライラや興奮で寝つけない
□目がさえて眠れない
□嫌な夢を見る
気血が上昇し体の上部に熱がこもっている不眠です。“気が高ぶって眠れない”タイプです。

□疲れているのに眠れない
□不安や考え事で寝つけない
□夢が多くて寝た気がしない、あるいは眠りが浅くすぐ目覚めてしまう。
気血不足で眠る力も不足している不眠です。体力・気力が消耗して“疲れているのに眠れない”タイプです。

「起きて活動しているとき気血は体を巡り活動の原動力となりますが、夜横になって眠ると気は省エネモードとなり、血は肝へ戻って蓄えられ心身が休息します。」とvol.7でお伝えしました。
“気が高ぶって眠れない”タイプは気血が活動モードになっていて気が静まらず血が肝へ戻れない状態、“疲れているのに眠れない”タイプは肝へ戻る血が不足していて休息できない状態です。

どちらのタイプにしても気を静め、気血を養い、血が肝へ戻れるような起居を心がけたいです。

気は上がりやすく、下がりにくい

精神的な緊張や興奮、考え過ぎなどのストレスがあると頭部に気血が上がりそこで熱を発生します。体はもともと上熱下寒(上部に熱が集まり下部は冷える)になりやすく、“気が高ぶって眠れない”タイプではその傾向はさらに強くなります。
人は眠りに入る際、末梢血管が拡張して手足から放熱し脳の温度が下がる過程で眠くなると言われます。頭部に昇った気血を下げ“上熱”を冷ますことがポイントです。
半身浴や足浴で体の下部を温める、お腹や脚をマッサージする、3分間ゆったり深い呼吸をする、部屋の電燈は昼白色(太陽に近い自然な光)や電球色(暖かみのある落ち着いた光)にするなどして気が静まるように過ごしましょう。

また、血不足では“疲れているのに眠れない”ということが起こります。眠るのにもエネルギーが必要なのですね。このタイプの不眠は眠りが浅く連続して長い時間眠れないため、途中あるいは早朝に目が覚めます。夕方以降の気血の消耗を抑えることがポイントです。
テレビ・DVD視聴、パソコン作業など目の酷使や難しい考え事は控えましょう。布団に入った後にスマートフォンを見るのは避けたいです。
ストレッチ・気功・ヨガ・ウォーキングなどの運動はぜひ習慣に。ゆったりと静かにおこなうことで気
が静まり眠りやすくなるとともに、日中の緊張や姿勢の偏りからくる気血の滞りが改善され疲労回
復にも良いと思います。

消化に“気”を取られて熟睡できない

上がり過ぎた気を静めたり、気血を養うために、“食べる”という方法もあります。しかし過食や夜遅い飲食は快眠には逆効果になります。

□食べてすぐ寝る、夕食が過食気味
□朝お腹がもたれている、あるいは朝お腹がすいていない
□起床時、舌の苔が厚い
不眠の自覚が無いかもしれませんが、飲食の仕方が睡眠を妨げているタイプです。寝ているはずなのに朝から疲れています。

胃に食べものが入っている状態では消化吸収活動に気血が使われるため、横になっても寝つき
にくく、眠りが浅くなる傾向があります。夕食は“早め、軽め“がポイントです。
食べるものにもよりますので一概には言えませんが、遅くとも就寝1時間前には食事を終えられる
よう心がけましょう。夕食の量は起床したときに空腹を感じ、朝食を美味しく食べられるかどうかを
目安にしてはいかがでしょうか。

気血の滞りと不足が原因で様々な体調不良や病気が生じます。また、睡眠が改善されるとその他
気になっていた体調不良や症状も緩和していくということがよくあります。「寝る子は育つ」と言いま
すが、寝るという養生が気血を蓄え養い成長・発育につながります。ということは、大人にとっても
寝ることは大切ですね。眠りと気血の関係性からも睡眠は生きるために大切な休息と言えます。

飯田 勝恵
飯田 勝恵 - Katsue Iida[薬剤師・薬日本堂漢方スクール講師]

静岡県立大学薬学部卒業。1998年薬日本堂入社。約10年間の臨床と店長を経験。店舗運営や相談員教育などに携わり、その後「自然・人・社会に役立つ漢方の考えをより多くの人に伝えたい」と講師として活動。薬だけではない漢方の思想や理論に惹かれ、気功や太極拳、瞑想なども生活に取り入れながら漢方・養生を実践している。

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