- 劉 梅 – Mei Ryu[中医師]
中国黒龍江省生まれ、黒龍江中医薬大学卒業後、ハルビン医科大学付属二院に内科医として臨床を経験。1994年に来日、北海道大学医学部客員研究員を経て、2001年、薬日本堂に入社。主な著書『中国の女医さんが教えるおいしくて身体にいい中華』『病気・症状を改善 これならできる漢方ごはん』。
杏仁豆腐の引き立て役?クコは目にも耳にも良い!
生薬の花めぐり(5)
日々の暮らしの中で食べている食材の中に、実は生薬になるものがあります。このコラムでは、生薬になる植物とその花を紹介します。より生薬を身近に感じていただき、皆さんが簡単なところから漢方の実践ができるように、と願っています。今回はクコの話です。どうぞお付き合いのほど、よろしくお願いします。
クコの実といえば、杏仁豆腐の上に載っているイメージですね。最近では、ゴジベリーという名前で、スーパーのドライフルーツコーナーや、チョコレートをかけたお菓子として見かけるようになりました。
ところで、クコの花は見たことがありますか?クコはナス科の多年生植物です。
そのため、ナスの花と色が似ています。小さくて,可愛らしい花でしょう?東京のあたりでは7月に花が咲きはじめ9月末まで見られます。花を摘んで洗い、お茶にしたり煮物や炒め物にすることができます。血の貯蔵と調整を主る肝と、生殖や泌尿を主る腎を強くするので虚弱体質や健康維持、老化防止に良いとされています。
2017年8月13日撮影(東京都薬用植物園)
クコの実は甘味があり、若干の苦味もあります。約2000年前の生薬の書物、『神農本草経』では「上品(じょうほん)」に区分され、安全で薬用と食用の両方を兼ね備えると書かれています。
乾燥したものを使い、一日10~20gが目安です。滋養強壮のはたらきで老化防止に、また眼精疲労、視力低下、耳鳴り、難聴など目と耳の不調に良いとされています。
お粥や鍋料理、炒めものなど、気軽に使えます。菊花と合わせるとなお良いですね。クコはビタミンB、ビタミンC、ミネラルなども豊富で、美容食品としても知られています。
クコの性味は「平」と書かれていますが、少し温めるのでイライラしやすいとき、ほてりや炎症のあるときは控えめにするか、清涼薬(食)を適宜加えるとよいでしょう。
また、少し消化しにくいので胃腸虚弱、下痢のときも控えめにしてください。食べ過ぎると鼻血が出ることもありますので注意しましょう。
クコが配合されている処方に杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)があります。
クコの葉は枸杞葉(くこよう)と呼ばれ、中国の南方では葉の新芽を野菜として炒めものや煮物に、乾燥したものはお茶として使っています。冷やす性質をもち、ほてりや目のかすみに良いとされています。
根皮は地骨皮(じこっぴ)と呼ばれ、清熱涼血薬に分類されます。
火照りや発熱を伴う症状や病気に良いということで、月経前のほてり、更年期のホットフラッシュ、高血圧、糖尿病、出血などに使われています。
日本で地骨皮が配合されている処方には滋陰至宝湯、清心蓮子飲があります。
明代、李時珍の『本草綱目』によれば、春に葉、夏に花、秋に実、冬に根を採り、四つ合わせて作った丸剤を服用すると、年をとっても歯が丈夫で、髪の毛が黒々と、健脚でいられるとのこと、積極的に摂りたいですね。
葉と花、実と根も全部食べられ、はたらきもそれぞれ。捨てるところがない、クコの魅力が伝わったでしょうか。
次回は「シソ」の話題をお届けします。お楽しみに!
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