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公開日:2016.08.01 更新日:2020.05.2010809view

痔の腫れや痛みに効果抜群の漢方薬 ~乙字湯(おつじとう)

知っておこう!漢方薬の意外な力 vol.15

【人に言えない痔の悩み】
身体の悩みはどれも人に言いづらいものですが、特に痔は人知れず悩んでいる方が多いようです。
痔には種類がいくつかあります。よくみられるのがイボ痔と切れ痔です。原因もさまざまで、便秘やトイレ時間が長くて排便時のいきみが強い、長時間歩きまわったり、立ちっぱなしや座りっぱなしの人におこりやすいようです。妊娠や出産がきっかけとなる場合もありますし、下痢、アルコールや辛いものの摂り過ぎ、冷え、ストレスなども原因のひとつです。

患部が腫れて痛みがあり、「座る時につらい」「排便時に痛い」「出血して困る」などの症状がみられます。何とかしたいのに恥ずかしくて、薬を買うことや病院に行くことをためらう方も多くいます。
そんな痔の悩みに有効なのが乙字湯です。

【日本生まれの漢方薬】
 乙字湯は、江戸時代、水戸藩の侍医だった原南陽(はらなんよう)が生み出した漢方薬です。武士が野営をする時などに体が冷えて、血行不良から痔になってしまったのを改善するために発案したといわれています。
後に浅田宗(あさだそう)伯(はく)が手を加えたものが現在の乙字湯で、固くなってしまった便を排出しやすくする生薬や、炎症を鎮める生薬などが配合されています。
 
乙字湯
当帰、柴胡、黄芩、甘草、大黄、升麻
大便が硬く、便秘傾向のあるものの次の諸症:痔核(イボ痔)、切れ痔、便秘、軽度の脱肛

漢方薬はその人の状態によって選ぶので、便秘がない場合、脱肛がある場合、出血が激しい場合などは他の処方を用います。悩まずに相談してみるとよいでしょう。
外用薬として痔に使える紫雲膏は、明の時代に作られた潤肌膏(じゅんきこう)に日本の華岡(はなおか)青(せい)洲(しゅう)がアレンジを加えた漢方薬です。こちらは痔の痛みや傷口の解消に役立ちます。最近では紫雲膏の坐剤もみかけるようになりました。当帰は患部の血行を促進して、肌の再生をうながします。(写真上部の生薬)紫根は炎症を抑える働きがあり、鮮やかな紫色です。(写真下部の生薬)

【痔の養生】
痔になってしまった場合は、市販薬や今回ご紹介した乙字湯、紫雲膏の出番ですが、出来れば普段から養生したいものですね。便秘をしないことが第一の予防。日々のお茶に生薬由来のものを取り入れてみてはいかがでしょう?ハブ茶やドクダミ茶や下剤のような強い作用はなく、穏やかに通じをうながします。ヨモギ茶はお腹をあたためて血行を良くし、出血を止めるはたらきがあります。

痔の引き金になる生活習慣をあらためて、スッキリ快腸な毎日をめざしましょう!

齋藤 友香理
齋藤 友香理 - Yukari Saito[薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師]

1969年北海道生まれ。東京理科大学薬学部卒業後、薬日本堂入社。10年以上臨床を経験し、平成20年4月までニホンドウ漢方ブティック青山で店長を務めていた。多くの女性と悩みを共有した実績を持つ。講師となった現在、薬日本堂漢方スクールで教壇に立つかたわら社員教育にも携わり、「養生を指導できる人材」の育成に励んでいる。分かりやすい解説と気さくな人柄で、幅広い年齢層から支持されている。

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