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公開日:2015.12.01 更新日:2020.05.2231376view

漢方のぬり薬は鮮やかな紫色 ~紫雲膏(しうんこう)

知っておこう!漢方薬の意外な力 vol.7

漢方薬は飲むものと決めつけている方はいませんか?
病院や薬局で手に入りやすいのはエキス剤や錠剤ですが、漢方薬にはさまざまな剤型のものがあるのです。

漢方薬の剤型
漢方薬のイメージを聞いてみると、「まずくてすごいにおいがするお茶」という答えが返ってきます。これは煎じ薬、煎剤、湯液剤(とうえきざい)などと表現するもので、漢方薬の原料である刻んだ生薬の組み合わせに水を加え、半量になるまで煮詰めるものです。独特の味と香りが特徴ですが、「おおっ、しみわたって効く感じ~」という声がよく聞かれます。

他には散剤、丸剤があり、煎じ薬のエキスに賦形剤を加えて加工したものが、エキス顆粒や錠剤、カプセル剤などで、いずれも内服して体調を整えます。内服の分類には、薬酒やシロップ剤なども含まれ、現代でもおいしく飲まれています。

漢方の外用剤
以外と知られていないのが、外用剤の存在です。
ひとつは洗浄薬の苦参湯(くじんとう)です。苦参という生薬だけで構成されているのですが、煮詰めた煎じ液で患部を洗います。殺菌や殺虫の働きがあり、古くは、家畜である牛や馬のノミ取りに使われていたようです。湿疹や皮膚の化膿、痒み、床ずれ、水虫などにも使われるのです。意外でしょう?
もうひとつが軟膏剤で、紫雲膏(しうんこう)と中黄膏(ちゅうおうこう)が薬局製剤として登録されています。

万能な軟膏、紫雲膏
紫雲膏は当帰(とうき)と紫根(しこん)の2つの生薬刻みを、ごま油・ミツロウ・豚脂で煮詰めたものを練った軟膏です。鮮やかな紫色でごま油の香りがします。当帰は血を補い、皮膚の再生をうながします。紫根は炎症を防いでくれます。ひびやあかぎれ、乾燥による痒み、ひっかき傷、痔などにも使えます。台所でちょっと油がはねてしまい火傷したという時も、すぐに水で冷やして紫雲膏を塗っておけば、赤く残らずに済む優れもの!

実は、私の母は紫雲膏のヘビーユーザーです。
晴天下で庭の掃除をすると、すぐ顔が赤くなりシミになってしまう母。「日焼けは火傷と同じよ!」という私の言葉に反応し、「ならば火傷に効くという紫雲膏がいいんじゃない?!」といって、寝る前に日焼けした顔に紫雲膏を塗って寝るのです。紫色の顔に満面の笑みをたたえて…
その甲斐あってか、ひどいシミだらけの顔にならずに済んでいるようです。

中黄膏は、ウコンと黄柏(おうばく)で構成されているので、黄色い軟膏です。熱を冷まして解毒する効果があるので、患部が赤く腫れて化膿している時などに使います。化膿したニキビなどに使って、喜ばれたことがあります。
この2つは救急箱に常備して、うまく使いこなせるといいですね。

次回は冷えに多用される「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」のお話です。お楽しみに!

齋藤 友香理
齋藤 友香理 - Yukari Saito[薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師]

1969年北海道生まれ。東京理科大学薬学部卒業後、薬日本堂入社。10年以上臨床を経験し、平成20年4月までニホンドウ漢方ブティック青山で店長を務めていた。多くの女性と悩みを共有した実績を持つ。講師となった現在、薬日本堂漢方スクールで教壇に立つかたわら社員教育にも携わり、「養生を指導できる人材」の育成に励んでいる。分かりやすい解説と気さくな人柄で、幅広い年齢層から支持されている。

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