漢方ライフ読む(コラム一覧) > ありえない?胃腸薬で不正出血を治す ~帰脾湯(きひとう)
公開日:2015.09.01 更新日:2020.05.228988view

ありえない?胃腸薬で不正出血を治す ~帰脾湯(きひとう)

知っておこう!漢方薬の意外な力 vol.4

不正出血が起きた場合、多くの女性は婦人科を受診します。
けれど漢方では、胃腸薬を用いることがあるのをご存知でしたか?

漢方と現代医学では病気や症状のとらえ方が違う
現代医学は診断の上、病名をつけてその病気に対しての治療を重視し、化学合成薬を使って治療します。不正出血であれば、子宮と女性ホルモンの異常と考えて、ホルモン剤が出されることが多いようです。

漢方では症状だけでなく、体質や生活要素を重視して原因の解消を目指します。治療の過程で、本人が思っているものとは違った効能効果が記載されている漢方薬が出てくることもあります。

漢方現代医学
 病んでいる人、全体を重視する 病んでいる患部、局部を重視する
 自然薬をバランスよく配合した薬 有効成分を化学的に高濃度で合成した薬
 症状だけでなく生活習慣で治療方法かわる 病名によって治療方法が決まる

ホルモンバランスの乱れだけでは説明できない不正出血もある
33歳のAさんは、これまで月経について悩んだことが一度もありませんでした。ぴったり28日周期、痛みもほとんど気にならないのです。それが7・8月に不正出血があり、さすがに不安になって漢方相談に至りました。

よくよく伺ってみると、普段は温かい飲み物をとっているのに、今年は暑さに耐えられず6月頃から氷を入れた冷たいものを飲む機会が多かったというのです。そこで、胃腸の状態を整える帰脾湯をお出ししました。
帰脾湯をお出しする時に、Aさんは少し心配な顔をなされました。
「この漢方薬、効能効果に生理のことひとつも書いていないのですね…」

通常の不正出血では…
女性はある年齢に達すると初潮がきて、月経という形で出血が起こります。健康な方は26~30日の周期で起こり、月経期以外で出血することを不正出血と呼びます。女性の身体はナイーブなので、大きなストレスがかかったり、無理なダイエットなどでホルモンバランスが乱れると、周期の乱れや不正出血が起こります。このような時、漢方では肝腎の不調と捉えて漢方薬を選びます。肝(かん)は月経の周期や経血量をコントロールしています。腎(じん)は女子胞という子宮の健康状態を管理します。女性の三大漢方薬とも呼ばれる、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などが代表的な処方です。

今回の不正出血は胃腸の冷えが原因
Aさんの場合は、急に冷たいもので胃腸を冷やしてしまいました。漢方では胃腸の働きを脾(ひ)と呼びます。脾は飲食物を消化して気血を作り出すのですが、冷えるとうまく機能せず、血がもれてしまうのです。

「自分で自分の身体を傷めてしまったのね。水分の摂り方も気をつけるし、しばらくは腹巻しようかな。」
Aさんには納得して漢方薬を飲んでいただき、しばらくして不正出血もおさまりました。こんなふうに、症状と効能効果が合わない時もあるので、疑問に思ったら医師・薬剤師にたずねてみるとよいですね。

次回は月経前の不調と「加味逍遙散(かみしょうようさん)」のお話です。お楽しみに!

齋藤 友香理
齋藤 友香理 - Yukari Saito[薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師]

1969年北海道生まれ。東京理科大学薬学部卒業後、薬日本堂入社。10年以上臨床を経験し、平成20年4月までニホンドウ漢方ブティック青山で店長を務めていた。多くの女性と悩みを共有した実績を持つ。講師となった現在、薬日本堂漢方スクールで教壇に立つかたわら社員教育にも携わり、「養生を指導できる人材」の育成に励んでいる。分かりやすい解説と気さくな人柄で、幅広い年齢層から支持されている。

漢方スクールでの担当コース・セミナーはこちら

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

ページトップへ