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公開日:2015.05.01 更新日:2020.05.228438view

優れた名医こそ気功の達人-気功と華佗・張仲景

劉梅先生の気功のおはなし⑩

今回は二人の名医が気功について語ったことをご紹介します。

長い年月の中で人々はいかに健康に病気をせず過ごせるか、どう病気と闘うかを考えてきました。生活の中から気功が生み出され、体系化されて、今では医療の分野でも使われるようになりました。今回は私が心から尊敬する約2000年前の名医、華佗(かだ)と張仲景(ちょうちゅうけい)を紹介します。二人とも内科、婦人科、小児科、鍼灸などに精通し、華佗は「外科医の祖」と呼ばれ、張仲景は「医聖(いせい)」と呼ばれています。皆さんも2000年前にタイムスリップした気持ちで読んでみてください。

華佗と聞いて「ピン!」ときたあなたは漢方ライフの熱烈な読者です!第8回でお話しした「五禽戯(ごきんぎ)」の発明者としても有名ですね。華佗が治療の際に使用する生薬は、必要な数種類だけ。鍼治療おいても、患者の症状にあわせ必要最低限の個所を的確に見出し、無駄がありません。短時間の施術で効果が出せる、まさに神業ですね。この洗練された技術力の高さには、彼の測り知れない努力と医術への情熱が感じられます。また華佗は「麻沸散(まふつさん)」という麻酔薬を発明し、これを使って全身麻酔の手術をするまでとなりました。世界的で最初の記録ですが、残念ながら「麻沸散」の文献は既に消失し、当時の処方は不明のままです。

張仲景は、先人の経験と自身の臨床経験をまとめ『傷寒雑病論』を著しました。『傷寒論』と『金匱要略』の二冊に分かれており、『傷寒論』の中の処方、葛根湯、桂枝湯、八味丸などは現代でも使われている名薬です。もう一冊の『金匱要略』には、気功についての記載があります。
「四肢才覚重滞、即導引吐納、鍼灸膏摩、勿令九竅閉塞」。意味は、「急に四肢が重く、むくんで腫れた感じがしたら、すぐに気功で気を巡らせ鍼灸や按摩をすると、それらの症状が改善され、九竅(両目、両鼻、両耳、口、尿道、肛門)も閉塞することがない」ということです。前触れもなく急に症状が出ることを外感病と言い、治療が適切ならば早く治せます。この場合は外からの邪気、つまり「外邪」が体内に入ることで、急に足がむくんで腫れを感じ、気血の通り道をふさいで詰まらせたのが原因。開いているはずの九竅もふさがったら、日常生活に支障をきたしますね。現代ならすぐ病院に行けますが、2000年前はそうはいきません。薬も高価でなかなか手に入らない時代ですから、医者や薬がなくても自分で自分の身体を治すことが、その当時の人々にとっていかに重要だったかが分かります。気功が医療として発展を遂げた背景には「病気を治したい」「健康でいたい」という沢山の人の切実な願いによるものだったのですね。名医こそ気功の達人だと分かっていただいたでしょうか!

今回で気功のコラム連載は最終回。読者の皆さん、長い間お付き合い頂き、ありがとうございました。文字だけでは、なかなか伝えきれなかったものが沢山あります。これをきっかけに、気功を身近に感じ、興味を持っていただければ幸いです。これからも、健康を増進し、美しくイキイキと過ごすために気功を続けていきましょう!

養生と漢方の智慧が満載の『漢方ライフ』を、これからもご愛読くださいね。

リュウ・メイ
劉 梅 – Mei Ryu[中医師]

中国黒龍江省生まれ、黒龍江中医薬大学卒業後、ハルビン医科大学付属二院に内科医として臨床を経験。1994年に来日、北海道大学医学部客員研究員を経て、2001年、薬日本堂に入社。主な著書『中国の女医さんが教えるおいしくて身体にいい中華』『病気・症状を改善 これならできる漢方ごはん』。

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